10. 「闇の訪問者…」 by 翼嶺さま


ラベンダーの香りが、意識を奪い、深い眠りへと誘う…。


よく眠れたと、感じて目覚めた朝に限って、両腕に不可解な痕が見て取れる。
まるで縛られていた様な、鬱血した痕。
記憶のないそれに、自然、眉間に深い皺が寄る。
どれ程記憶を手繰り寄せようとしても、ベットに潜り込んでから先の記憶が、完璧なほどに
抜け落ちている。
眠る為にベットに入るのだから、記憶の事など気に止める必要はないと言えばないのだが、
それでも目が醒め、覚えのない痕に不快感は否めない。

4月から、大学近くにと借りたアパートは、築2年のワンルーム。
15部屋あるそこは、自分が入居した事で、満室となった。
レディの姿がないのが、甚だ残念ではあるが、他の住人達ともそんなに歳が変わらぬ事で、
気兼ねなく、過ごせる事で気に入っている。
自分がレディであるならば、話しは変わるが、自分は男だし、腕の痕の他は、部屋の様子等、
なにひとつ変わっていないのだから、些細な事と認識するに留めた。

それでも、1ヵ月、2ヶ月過ぎても、不可解な腕の痕は続いた。
やっと薄くなったな…と思った翌日には、また色濃く腕を拘束した。
そろそろ精神的にも、苛々が募り始めたそんなある夜。
殆ど夜中に目覚める事等ないのに、何故かその夜に限って目が醒めた。
嫌、醒めたと思ったのだが、何故か瞼を開いた視界は、深く暗い闇に包まれていた。
目が、夜目に慣れていない所為だと思ったのだが、何度瞬きを繰り返しても、一向に闇は深く、
『夢』なのか? と思い始めたその時、ゆらりとその闇の一部が、揺らぎ、蠢くのを感じた。

なに?

起き上がろうとした体は、ベットの上にと縫い止められたみたいに動かない。

金縛り?

と感じた物の、何故か自分で出したその応えに、納得が出来なかった。

「あー目、覚めた?」

闇の中、不意に聞えてきた声には聞き覚えがあった。
1階の部屋の住人…美大に通っているって言っていた。そばがす面の人懐っこい笑顔の…

「そろそろ起きていないとつまんねぇから、いいじゃねぇか…」

次に耳に届いた声も、知っている。
隣の部屋の、緑の髪した…学部は違うが、同じ大学に通っているって言っていた…。

「無駄話しは良いから、早くしろ」

この声も聞いた事がある。
鼻の上に真一文字の傷痕のある、どう見ても堅気には見えない、ガタイの良い男。多分、
ここの住人では最年長者。

「こんな事して、い、良いのか…?」

何処かおずおずと聞える声も、知っている。
何時会っても、目の下に隈を付けた顔色の悪い、無精髭の奴。

「今更だろう?」

緑の髪の、低い声が応える。

交わされている会話の意味が、掴めない。
ひとつひとつの声は、全て聞き覚えがあるのに、闇がその姿を確かな物にとしない。
目の上にはなんの障害物も感じないのに、何故か瞳が闇にと慣れない。
それなのに、自分の姿だけは、闇の中にと浮かび上がっている事が判る。
ひとつに纏められた両腕は、頭上でひとつに縛られている。
寝巻きのボタンは全開に開かされていた。
そして下肢は、下着諸共、ズボンを取り払われ、晒された裸身を大の字にと開かされていた。
両足首は、それぞれベットの足にと繋がれている。
闇の中にいる奴等の思惑が判らぬ程、初心ではないが、それがこれから本当に起こり
うるのか、想像できない。

「あー心配しなくても大丈夫だよ。この数ヶ月、ずっとその体、慣らしていたんだから。」
「眠っていても、体は素直に反応していたぞ」
「感じている時の声もちゃんと覚えた」
「今日は意識がしっかりあって、イイ声が聞けそうだ」

闇にと溶け込んだ声は、最早、どれが誰の言葉か判らない。

「…な、なんで…?」

漸く搾り出せた声は、驚く程に掠れていた。

「ん? ああ。俺たち君に一目惚れしたんだ…んで、抜け駆けしないって協定で、俺たち皆で、
君を可愛がる事にしたんだ」
「だから、皆知ってる。何処をどう弄れば、その白い肌が悦ぶか」
「眠っていても、感じれば、零れる息が甘くなるって事も…」
「イク瞬間、その金の髪が煌き跳ねる事も」

闇の中の声は、至極楽しそうに、代わる代わる応え聞かせる。

「でも…ここはまだ、誰も知らない…」

誰かの指が、後孔を撫で擦る。

「折角目を覚ましてくれたから、今夜、皆にここの味を教えて貰う…」
「順番は、もうずっと前から決めてあったし…」

その言葉に、ぎゆっと後孔が搾った。

「最初にここを散らすのは俺だ」
「いや…だ」
「てめぇに拒否権はねぇよ」

抵抗はあっさりと、切り捨てられた。

「そう言う言い方は、可哀想だろう? そんなに怯えなくても大丈夫だよ。俺たちは、皆で君を気持ち
よくしてあげたいんだ。怖がらないで…」
「俺たちみんなであんたに尽くすんです」

ふたつの言葉が終わった瞬間、嫌悪と恐怖で萎えているペニスが誰がの口膣内にと包まれ、腰が
跳ねた。
はしたなく拡げられた足の間、暗い闇が動く。
それは、じゅぶじゅぶと、態と唾液の音を立てながら、強弱を付け柔らかなペニスを食む。

「ん…あっ…や、め…」

初めての体験である筈なのに、その刺激を体は知っていた。

「やめ…くっ…だ…」

拒否を訴える声は、思った以上に弱々しく、徐々に張り詰め、固くなったペニスから先走りが滲み
出るのが判る。
込み上げてくる射精感に、首を横に振りながら堪えるが、もう駄目だ…見えない誰かの口にと
犯され、イカされるのだと言う屈辱感に、ぎゆっと瞼を閉じたその瞬間、ペニスを包み込んでいた
滑った生暖かな感触が離れた。

「え?」

後僅かな刺激でイケた身体を不意に突き放された事で、零れ出た自分の声の切なさに戸惑う。
闇が見透かした様に哂うのが判った。
その羞恥心に襲われる間もなく、寝巻きの薄い布越から、乳首に触れられた。
指の腹で、ふにふにと動いていたその刺激で、乳首が固くなると容赦なく、強い力で捻られ、
引かれた。
確かな激痛が、身体を襲ったのに、勃ちあがったままのペニスから、どくりと先走りが溢れ出た。

「痛くされるの、好きだよな」

揶揄した言葉が、耳を掠める。

「乳首、捻あげたら、先走りでチンポがべちょべちょだ」

誰かの指が、濡れ続けているペニスを指で弾き哂う。

「ほら、そんなに苛めない。今回は、うーんと悦くしてあげるんだろう?」
「あ? 痛いの好きだから、痛くしてやってんだろう?」
「だから、それは追々…だろう?」

交わされる言葉に慄く。
追々、自分をどうしょうと言うのだ?

「無駄話しはいいから、早くしろ。時間が勿体無い」
「そうだな」

するりと足の戒めを解かれた気配に、一瞬の勝機を感じたが、動かそうとするより先に、がっしりと
足首を掴まれ、高々と持ち上げられる。

「やめ…いやだつっ!!」

自分ですら、直視した事のない箇所に、いくつもの視線を感じる。

「いやだっても、ヒクヒクしてんぜ」
「いっぱい慣らしたからね」

「な…慣らした…?」

「ああ、色んな形のディルト挿れてここ、慣らしてたんだ…痛いの可哀想だし、1番最近使ってたの
はこれ」

ぱふりと顔の横にと何かか投げ落とされた。
視界の隅に映ったそれは、レディの腕の太さ位はあり、びっしりとした凹凸が刻まれた性具。
それは、低いモーター音を立てながら、いやらしく蠢いていた。
これが自分の内に挿れられた記憶はまるでない。

「初めはアナル用の細いヤツだったんだけど、ここが物足りなさ気になったから、今では、それ位の
太さがちゃんと根元まで挿いる様になった…」

「嘘だ!」

いくら深く眠っていたからと言って、そんな異物を挿れられて、呑気に眠り続けられる筈がない。
その感情を察した様に闇が告げる。

「俺は調香師でな…ラベンダーをベースにお前専用に作ったんだが、事の他、体質にあったみた
いだな…俺たちが何をしてもぐっすりだったぞ」
「でも、体は素直だったよね」
「ディルトで何回もイキまくっていたもんな」
「そう。俺たちは、お前の精液の匂いも味も知ってる。」

さっと自分の体が、羞恥と屈辱に赤らむ。

「これからは、俺たちひとり、ひとりの匂いと味を覚えてもらう…」

晒されていた後孔に熱い息が吹きつけられ、濡れた舌先がそこを舐め始める。

「嫌だ…やめ、ろ…」

体が、言葉を裏切る。
確かに心は激しく拒絶を訴えているのに、濡れた舌先の感触を、肌の上を這う無数の指先に、体が
歓喜し、その快感をもっとくれと求め波打つ。

「嫌だ、やめろって言ってる割には、てめぇのチンポ、全然元気じゃねぇか」
「素直になった方が楽だと思うよ? 体は快感を覚えているだろうから…酷い事も痛い事も、今夜は
するつもりないから…ただ、俺たちを覚えて貰うだけだから…」

誰かの言葉を、耳に聞きながら、濡らされた孔を指で開かれる感触を知る。

「何時見ても、綺麗な色してんな…玩具をいっぱい咥えたのに」

更に足を開かされたその瞬間、強く痛い圧迫感が下肢より駆け抜けた。

「っ…やっぱ狭いなぁ」
「俺が変わってやろうか? 俺の後なら、しっかり拡がって挿れやすくなるぞ」
「誰が変わるか…こいつの処女は俺のだ…」

グッと、増すばかりの圧迫感に、背が撓る。

「あーイイぜ…てめぇの中。いい感じに俺のを締め付けやがる」

「っ…」

「凄いな…きちきちに咥えてるクセに、入り口をビクビクさせてる…美味しいんだ」

結合部分にと注がれる視線は、羞恥を煽る筈なのに、そこは視線を感じてヒク付き、無遠慮に浸入
しているペニスを嬉しげに締め付ける。

「動くぞ」

返事を待つ事無く、体内に浸入したそれは抽迭を始める。
中を抉る様に擦られるそれは、未知の感覚である筈なのに、体は与えられる律動に素直に応え、
悦ぶ。

「気持ち良いか?」

甘く響く声に、無言で首を横に振る。

「体はイイって言ってるみたいだけどな」

笑いを含んだその言葉を、言い返せずに下唇を噛む。
視界の先に、幾つもの闇が揺れる。
先走りを滴らせたままのペニスが、再び生暖かな口腔内にと包まれた。

「イカせるなよ…」
「判ってる。蜜が滴って上手そうだったから舐めるだけだよ」

その言葉の通り、生暖かく滑った舌は、まるでアイスキャンディーでも舐める様にして、先走りの滴り
に舌を這わせ、絶妙なタイミングで昂ぶりを遣り過ごす。そのもどかしさから、強請る様に腰が揺れ
動くのを自分の意思ではもう、止められなかった。

確かに、この体は知らない間に慣らされている。
両の乳首を、それぞれ別の指が、舌が、唇が苛む。疼く様な快感が身体を駆ける。

同性より与えられるその刺激に、嫌悪も感じず、触れられる箇所、全てが狂おしいほど気持ち良い。
もう、耐えられないとばかりに、噛み締めていた唇から嬌声が零れた。

「はっ…あ、あ…イっ…」
「何処がイイ?」
「…ど、どこも…」
「欲張りだな…ひとつ選べ。チンポか、乳首か、ケツか…好きな箇所でイカせてやる」

告げられた瞬間、体内の中の熱く固いペニスが、ずくりと質量を増した。
覚えていなかった筈の玩具の冷たさ、無機質さと違い、脈打つ熱い熱が、身体を中より蕩かせ初める。
この熱をまだ、喰らっていたい。

「…ケ、ケツで…」
「俺ので、イキてえか?」

恥かしげもなく、応えた言葉を、闇に聞えた声は、至極やさしく返事を返す。

「イキたい…」

応えて、動かせぬ不自由な腕の変わりに、自分を蹂躙する闇にと、足を絡めて引き寄せていた。
それには、確かな体温があり、その事に何故か安堵する。
抽迭の速度が増し、結合部からは湿った音と、肉のぶつかる音が響く。
それに煽られる様に、零れ出る声が高く甘味を含む。

「うっ、ふん…あっ…や、もう…」
「イクのか?」

囁き、聞く声に何度も頷く。

「じゃあちゃんと言え…ナニに、何処をどうされたいか」
「…ケ、ケツの中…チ、チンポ…チンポで擦られて…イキたい…」

乞うた言葉に、闇達が愉悦を含み、笑い揺れ動く。

「イケ」
「ひっ…」

熱く固いペニスに、襞の1本1本を確認する様に攻め立てられながら、散々に焦らせされた吐精を
やっと許され、歓喜に泣き叫びながら、自らの腹の上に精液を撒き散らし、腰を躍らせ続けた。
何時の間にか、拘束を解かれた掌は、抵抗する事も忘れ、それぞれ誰かの固いペニスを握り、
扱いていた。
掌を濡らす先走りに、笑みが零れる。

「…っと…欲しい…」

媚を含んだ声に、自分はもう、戻れないのだと知った。
この闇が、俺を狂わせ、蕩かせたのだ…。

堰を切った様に零れ続ける声は、闇の中、何時までも甘く響く。
そして…闇の戒めにと、永遠に囚われたのを知る……。









ベッドの上で大の字に縛られちゃってるサンジ君に、ズギュン!です〜〜v
サンジが感度がいいのはサンジ受けのお約束ですが、欲望に素直なサンジが可愛いです!(^^)
複数を相手にしていながら悲壮感がなく、むしろ愛されてる感たっぷりで良いですね〜〜。
翼嶺さま、潤いをいただきました。ありがとうございました!