千載一遇のチャンスとはこのことをいうんだろう。
停泊中。きょうの宿泊は、町の一角にあるさびれた宿屋だ。
ウソップが籤引きの工作を怠ったためか、珍しくサンジはゾロとの二人部屋になった。
ありがたいが…心中はやはり複雑だ。
◇
髪を拭きながらシャワーから戻ると、先に風呂をつかったゾロは腰にタオルをまいただけの姿で眠ってしまっていた。
無理もない。このところの度重なる襲撃で誰もが疲れている。だるそうな皆の中、ひとり平然と振舞ってはいたものの、ゾロだって例外ではないだろう。
だが、同じく疲れの溜まった今の自分の前で、さすがにこれは無防備に過ぎる気がした。
ついつい胸の傷痕や張り出した腰骨のあたりを吸い寄せられるように見つめてしまう。
触れたい、と強く思い、それは駄目だとすぐまた思い直す。ただ、そこから視線を離すことは叶わなかった。
声をかければいいだけだ。眠るなら布団に入れと。
それでいつも通りじゃないか。
考える一方で、常に腹の中に抑えこんでいる良からぬ欲が、瞬く間に膨らんでいく。
先のこと、明日のことを考える。いつもそれで身動きが取れなくなる。本当は、こいつだって気づいているんじゃないかと――そればかりが頭を巡る。
やがてベッドサイドに歩み寄ると、サンジは目的のものを荷物から取り出した。食材をまとめるために持ち歩いているものだが、こんなところでも活躍してくれるとは思わなかった。彼を起こしてしまわないよう注意深く腕にまわし、軽く二重にいましめたあと、ベッドヘッドにくくりつける。
まあこの男にかかれば軽く破壊できるようなチャチな代物ではあるが、金銭感覚に優れた航海士の名を出して一瞬ひるませるくらいの役には立つだろう。
これでいい。
蛇蝎のように扱われるのも、嫌われるのも、考えてみれば今さらだ。
煙草に火をつけようとして、少し躊躇う。
さすがに目を覚ますかもしれない。
まあ、今からすることを考えれば、どちらにしろ遅いか早いかの違いだったが。
数秒迷ったのち、煙草をしまいこんで上体を寄せると、ゾロのまぶたがピクリと震えた。あまり深い眠りではなかったのか。腕に回されたそれを不快に感じたか…。
かまわず唇を合わせたところで、完全にまぶたが開ききり、その瞳が驚愕の色を浮かべたのがわかった。
むろん離してやるつもりはない。
反撃にうつる隙を与えず、がっちりと腕をつかみ指を絡ませ、噛まれるのを覚悟で舌を滑り込ませる。
もっと深く。
誰の手も届かないところまで、自分を刻みつけたい。この男に。
おれの本気に、てめェはそろそろ気づくべきだ――
end
きゃー、なんでしょう、このカッコよさ!! SZでも襲い受ZSでもOKとのことですが、どちらであっても、非常に対等な感じです!
縛って強引にコトを運ぶ場合、とかく「心が手に入らないなら身体だけは!」みたいになりがちですが、そうじゃないんですね、このサンジは! 『おれの本気に、てめェはそろそろ気づくべきだ』なんですよ、きゃーーー!! …こんな台詞、サンジに言われたい!
しばらくこの台詞が脳内でリピートされそうです! イラストの赤い舌にもドキドキvv チヒロさま、ありがとうございました!!
(それにしても、縄は買出しの必需品だったとは、言われてみればその通り! 盲点でした!!!)