新年


午前零時の新年の時報と共に始まった花火。港の広場にすえられたモミの木のライトアップ。野外に設けられた壇上で、短い祝賀スピーチをする頭役の人々。
それを新品の香りのする船から眺める。
ちょっとやべェ。
何がやべェって、今いる船がクソマリモがフランキーに頼んで作らせた船だってことだ。誕生日にだって気の利いたプレゼントを用意できたことのない苔頭が、俺のために船をだなんてなぁ…。

そんな感動と言うか、ちょっと心を揺さぶられると言うか、要するに…その…幸せと言うか…ひー言っちまったぜ…な気持ちのところに、ドカーンと花火。キラキラっとライトアップ。
と来りゃ、新年の乾杯もそこそこに船内のベッドルームに連れ込まれても、抵抗する気なんかおきなかったのもしょうがねェよな、うん。
公式イベントの花火が終わっても個人宅や船やロッジで花火に興じる声が午前3時くらいまで響いていたのを知っているわけは、つまりその、そういうわけだ。
しかもここ3週間ほどイきたくてもイけなかった俺のブツは、船でエッチに及んだとたん、くじらの潮吹きみてェに何度も盛大に噴き上げてくれちまって気持ちいいのなんのって。
あのハゲに『すげー出るなぁ』と言われた時には恥ずかしいというより『見たか、俺の精力を!』と自慢げにふんぞり返ってしまい、それに対応意識を燃やしたマリモと、その後は精力を競うようにヤっちまった。
そのせいで目覚めた時にはすでに9時近くになっていて、コックにあるまじき朝寝坊だった。初日の出、拝みそこねたなぁ…。

ベッドサイドの丸窓から外を見ると、波止場に並んだ船の姿を映しながら、水面がキラキラと光っている。快晴だ。
俺の腰にがっしりと回っているマリモの腕を引きはがして甲板に出る。
あぁ、この空気だ――。
キンと冷えていて頬を突き刺す。けれど淀みなく身体の隅々に行き渡り、すべてを新しく生まれ変わらせていく。

ノースブルーの冬の港では、真っ白な雪の清水の香りと、真っ青な海の潮の香りが絶妙にブレンドされる。それがこのリトルノースの港でも感じられた。
空気は鋭いほどにキンと冷えているが、いい日だ。新年の幕開けにふさわしい。
あけましておめでとうリトルノース。



(了)


日付が変わるだけなのに、新年って気持ちが引き締まりますよね。
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(2013.01)