7月31日
小さい湖へ行きました。
小さい湖に行くのには「ていれ」をしていない森をとおります。
ぼくは「ていれ」をしない森のほうが動物がくらしやすいんだよと言いました。
とちゅうでリスの親子を見ました。
でもルリさんは「お、リスのカップルだ!」と言いました。
「カップルじゃないよ、親子だよ」とぼくが言うと「耳がとんがってるほうがヤロウで、耳が丸くてやさしいかんじのほうがレディじゃねェのか?」とルリさんは言いました。
ぼくは「リスのこどもは夏でも耳が毛に守られててそれで耳がとんがって見えるんだよ。おとなになると夏に冬毛がなくなってまるい耳が見えるんだよ」と教えてあげました。
マリさんが「動物のはつじょうきは春だろ。てめェはねんじゅう女のケツおっかけてるからわかんねーだろうがよ」と言いました。
それでケンカになりました。
ぼくはわらいそうになったけどがまんして「森ではしずかに!」と注意しました。
8月1日
きのうの続きを書きます。
湖にちかづくと、ぼくはふたりに「しー」とあいずをしました。
そしてそおっと水のそばに行きました。
湖にはカイツブリの親子がいました。
ヒナはまだ泳ぐのがへたくそで、風がふくとひっくりかえってカラダが水にはいって、足が水のうえにでてしまいます。
ずっと見ていたらキツネが水を飲みにきました。
ヒナはいそいで親鳥の背中によじのぼって、親のはねの中にかくれました。
でも1わだけ親鳥が取ってくれた虫を食べるのにむちゅうなヒナがいました。
マリさんとルリさんが「ゴムそっくりだ」と言ってわらいました。
どういう意味だろう?
親鳥はそのヒナをつついてせなかにのせて、泳いでいきました。
お母さん鳥のはねの中からときどきヒナが頭だけぴょこぴょこ出すのがおもしろかったです。
ミズハタネズミやセキレイやシギやカエルも見ました。
そして帰りにヘラジカも見たんです!
マリさんが「トナカイに似てるな」と言いました。
ぼくはトナカイは見たことがないです。
ヘラジカは森のおくをゆっくり歩いていました。
かっこよかったです!
8月4日
オクトと川遊びに行きました。
雪の王女がくしゃみをする前にいっぱい水遊びしておかなくちゃ!
8月8日
今日は雪の王女がくしゃみをする日です。
雪の王女がくしゃみをすると冷たい風がふきます。
くしゃみのあとに雪の王女はうがいをするのでゴロゴロカミナリが鳴ります。
今日は水遊びをしてはいけない日です。
でも雨なんかふりそうにないんだけどなぁ。
8月9日
きのう、雨なんかふりそうにないって書いたけど、書いたあとで夕がたになって雨がふってきました。
冷たいとっぷうがふいて、空がまっくらになりました。
ゴロゴロとカミナリが鳴って、大つぶの雨がふってきました。
やっぱり雪の王女がくしゃみをして、うがいをしたんです。
森の上のほうでいなびかりがピカピカしました。
そのあとすぐに大きな音がひびきました。
家がビリビリなって弟がなき出しました。
今日も雨がふって、ときどきカミナリが鳴っています。
さむいです。
8月11日
今日の朝はさむくて目がさめました。
まどはしめたけど小まどをしめるのをわすれていました。
雨はようやくやみました。
空にはほそい雲がたくさんうかんでいます。
太陽が出ていたけどもう暑くないです。
8月14日
ベリーつみに行きました。
かあさんとジナイダおばさんがルリさんもさそいましょうと言いました。
それでルリさんもいっしょに行きました。みんなバケツを持って森へ行きました。
森はもうだいぶすずしかったです。
木の葉っぱからもれた光があたっているところはあったかいです。
帰りにルリさんの家に行きました。
ルリさんがつんできたベリーでソースを作って、パンケーキをやきました。
すごくおいしかったです!
ルリさんが雪送り祭でやったパンケーキの早わざ、また見たいなぁ。
でもショーは1回だけだと言っていたから、やってくれないかもしれません。
8月15日
風見ツバメのコテージに新しいお客さんがきました。
「ひしょに来たつもりだがこれはすずしすぎるよ」とお客さんが言いました。
ぼくは「リトルノースはあたたかくなるのはゆっくりだけど、さむくなるのはあっというまです」とせつめいしました。
お客さんのおくさんに、市場の場所とかいさい日を聞かれました。
おくさんはコックさんだそうです。
毎日おいしいものが食べられていいですねと言ったらお客さんは「つまはわたしがキライなものを食べさせようとするんだよ」と言いました。
「何がキライなんですか?」と聞くと「やさいがニガテなんだよ。特にブロッコリーとニンジンがニガテなんだ」と言いました。
とてもりっぱなヒゲがはえてるのに子どもみたいで、ぼくはわらっちゃいました。
8月16日
「風見ツバメのコテージに来たおくさんはコックさんなんだよ」とルリさんに言ったら、ルリさんは「そりゃあ会ってみてェなあ、どんなマダムかなあ」とくねくねしながら言いました。
ぼくは風見ツバメのコテージに案内してあげました。
おくさんを呼ぼうとするとルリさんは「まてまて、もっと出あいはさりげなく、ろまんちっくにどらまちっくに…」とかいろいろ言いました。
でもおくさんがまどの近くに来たとたんルリさんは「あ!」と言ってぼくの手をつかんで走りだしました。
だいぶ走ってからルリさんは「トーレ、あのマダムにおれのことしゃべってないだろうな?」と言いました。
「しゃべってないよ」と言うと「よしこれからも何も話すなよ」と言いました。
へんなのと思ったけど、たんていごっこみたいでちょっと楽しかったです。
8月18日
ハチミツ市が始まりました。
リトルノースのハチミツはとてもいいかおりなのでたくさんの人がほしがります。
だからジナイダおばさんが子どものころに、エライ人たちが『カイキン日』を決めたそうです。
とうさんが新しい風見を作るから見に来ないかと言いました。
ポルトのコテージの風見は、ほとんどとうさんが作ったものです。
でもぼくは風見ツバメのコテージに来たおくさんを、ハチミツ市に案内するやくそくをしていたのでことわりました。
おくさんはハチミツ市でハチミツチェリー水をおごってくれました。
とちゅうでルリさんを見たけれど、ルリさんはやっぱりコソコソしていました。
8月22日
明日はリンゴ祭りなので、ジナイダおばさんの庭のりんごの木からりんごをもらってきました。
一番おいしそうなりんごは明日おそなえに使います。
残りのリンゴはルリさんの家にもっていきました。
婦人会のおばさんたちもリンゴを持ってルリさんの家に集まってきました。
明日のお祭りで売るリンゴのパイをみんなで作りました。
8月23日
リンゴ祭りがありました。
かあさんは婦人会でリンゴのパイを売りました。
あっという間に売れました。
ぼくはリンゴパン食い競争にでました。
10人中5位でした。
そのあとルリさんがパイの追加をもってきたけど、すぐに帰ってしまいました。
風見ツバメに来たおくさんに見つからないようにしているのだと思います。
8月26日
ぼくとかあさんとぼくの弟とジナイダおばさんとキムおじさんとマリーナおばさんとルリさんとマリさんでキノコ狩りに行きました。
フードのついたウールのパーカーを着て、へびにかまれないように長靴をはいていきました。
マツの木の下にヤマドリタケがたくさんありました。
ルリさんは「ポルチーニ」と呼んでいました。
シラカバの下にはシラカバ白キノコがたくさんありました。
これもルリさんが違う名前で呼んでたけど忘れました。
赤茶色のキノコや黄色いアンズタケもとりました。
ベリーもいっぱいつみました。
とちゅうでマリさんとマリーナおばさんがはぐれてしまったのでルリさんがさがしにいきました。
帰りはルリさんの家へ行って、とったばかりのキノコで夕ごはんを作って食べました。
ぼくたちが帰る時、ルリさんが今日は船で寝ると言いました。
マリさんは「好きにしろ」と言ってコテージに残りました。
ぼくたちはルリさんといっしょに丘をくだって帰りました。
8月28日
港でルリさんに会いました。
かみがくしゃくしゃでした。
「ふつかよいで頭がイテー」とルリさんは言いました。
きのうも船にとまったらしいです。
「今日は市場に魚がすくねェな」とルリさんが言いました。
ぼくは今日は『だんじきの日』だと教えました。
「だんじきってぇことは今日はみんな何も食わねェのか?」とルリさんが聞きました。
ぼくは肉とさかなを食べない日ということや、むかしは8月15日から2週間、肉とさかなをたべなかったことや、今はだんじき期間の最後の2〜3日間だけ食べないようにする人が多くなったことを教えました。
「でも歴史のアナトリー先生は、だんじきすると食べ物のありがたみがわかるって言って今でも2週間、肉とさかなを食べないんだよ」とぼくが言うとルリさんはまじめな顔でうなづきました。
そして「俺にもだんじきが必要ってことかもな」と言いました。
「どうしてルリさんにはだんじきが必要なの?」って聞いたらルリさんは
「この島へ来てよい想いばっかりして、ちっとのぼせちまったからさ」と言いました。
ルリさんの言ってることはなんだかむずかしくて、よくわかりませんでした。
8月31日
明日の始業式のために花を買いにいきました。
花市場で学校の友だちにたくさん会いました。
みんな花を買いにきていました。
ぼくは黄色い花を買いました。
今年の夏休みはいつもと違いました。
コテージのお客さんを森や市場に案内したし(去年は荷物運びだけでした)、日記も書きました。
まえは作文を書くのはあまり好きじゃなかったけど、今はおもしろいです。
夏休みが終わっても、日記をつけようかなと思いました。
◎先生からのひとこと◎
夏休み中はおもしろいことがたくさんありましたね。マリさんとルリさんの話がとてもよく書けています。
夏休みがおわってもぜひ日記を書いてください。書いたら先生に見せてね。
(了)