月と暁を喰らい
「クリスマスってのはいいもんだな。」
日ごろ眉間に縦皺を走らせている剣士が、上機嫌でそんなことを言うもんだから、隣でけだるくくつろいでいた料理人は、火をつけずに口に咥えてもてあそんでいたたばこを落としそうになった。
「は? てめェ頭でも打ったか? 悪ぃもんでも喰ったか? いやいや、食いもんは俺が仕切ってる限り変なもんは喰わせてねェから、今の俺とのセックスがよすぎてトリップしちまったか? それともやっぱり脳みそも筋肉か?」
そう言いながら料理人は、ご丁寧にも浅黒い額に自分の白い額を押し付けながら熱をはかろうとする。
「熱もねェし頭も打ってねェ。 そうじゃなくて、てめェが今日は機嫌がいいからさ」
ひやりと冷たい白い額を気持ちよく感じながら剣士がそう答えると、料理人は目をぱちくりさせて聞く。
「機嫌がいい? そうだったか?」
「ああ」
ゾロは、一日中にこやかにほほえんでいたサンジを思い出して、表情をゆるめた。
そんなゾロを見ながら、しばし今日一日の自分を振り返っていたサンジは、やがて、ふっと笑うと、
「ちげぇよ。クリスマスだからじゃなくて、うちの非常食の誕生日だからだ。」
「誰かの誕生日だと、てめェは機嫌がよくなるのか? いろんな料理が作れるからか?」
「んー、誕生日にさ、周りが険悪なムードだったりしたら、たとえ自分が悪くなくても、なんか悲しくならねェか?」
だから今日は寝腐れ剣士が食事に遅れてきても、船長が途中でつまみぐいしても、いちいち目くじら立てないようにしてたのだと言う。
いかにもこの金髪のグル眉コックが考えそうなことだと剣士は納得した。
口が悪くて横柄に見える態度の裏にある細やかさ。
ゾロはすでに今晩幾度か交わした情交の汗で、普段より幾分しっとりとしている金の髪をそっとすいた。
そのゾロをまっすぐに見つめ返してくる蒼から目を離さずに、唇を重ねる。
舌を差し入れれば、極上のトロのようにねっとりと柔かい舌が絡み付いてきた。
「あふっ…」
サンジの濡れた唇から甘い吐息が零れて、透明な唾液がつ…と頬を伝う。
その唾液を追いかけて、ゾロは舌を頬から耳朶へと走らせた。
耳を甘噛みすると、白い身体がふるりと粟立つ。
サンジは耳が弱い。
きつく眉根を寄せて、いやいやするように頭を振って、刺激から逃れようとする。ゾロの厚い胸板を突いて押しのけようとする。
それを押さえつけて執拗に耳朶を嬲ると、やがてうっすらと目元に涙を滲ませ、くうっと啼いた。
舌を尖らせて耳の穴を舐ると、ペニスを体内に受け入れる時のように背をそらせて喘いだ。
「
ゾ…ロッッ…!」
浅黒い身体の下で、白い身体がもがくようにシーツを蹴る。
ようやく耳を解放しても、まだ刺激の余韻に打ち震えている。
が、内腿に当たる硬さを感じてわずかに顔をしかめた。
「てめ…まだ足りねェの?」
「ああ、さっきの誕生日の話聞いたらよ、また抱きたくなっちまった…」
きゅうっと絞るように抱きしめ、シガーの匂いとバニラの匂いが混じった首筋に顔を埋めて、くんくんと嗅ぐように鼻をすりつける。
やれやれというように金髪が溜息を吐いた。
(未来の大剣豪がこんなに甘ったれだとは、お天道様も知らねェだろうな…)
そう思っていると、首筋をべろりと舐め上げられた。
愛撫再開にサンジの身体はしっかり反応する。
どうやら俺もまだ欲しいらしいぜ、そう思ってサンジはゾロの身体をかき抱いた。
「あっ…!」
胸の飾りをちゅうっと吸われて、無防備な声が零れ落ちた。
ソコを吸われるのは今日だけでもう何度目かだというのに、毎度毎度、艶っぽい声が上がるのが妙に嬉しくてゾロは吸い上げたり舐めまわしたりを繰り返す。
あっという間にぷくりと紅い実のように固くなった胸の突起を弾くと、ああっと高い悲鳴が上がる。
節くれだった指が、綺麗に割れた腹筋の谷間をたどり、くびれた細い腹部を滑っていく。
下肢の翳りに手を伸ばされ、吐精を繰り返したあとだとは思えぬほどにしっかり勃ち上がっていることを確かめられて、白い身体が震えた。
すでに何度か達したあとのペニスは簡単に先走りの露を零し、いつもは剣を握っている指先を濡らす。
ゾロはゆっくりと時間をかけてサンジのペニスを愛撫し始めた。
先走りの粘液を、にちゃりと亀頭に塗り広げ、カリ首を刺激し、
陰茎を包み込みながら、ゆるゆるとしごく。
「う…んっ…ふぅんっ…」
漏れる喘ぎ声を押さえようとしたせいで、かえってすすり啼きのように艶かしい声が零れる。
ペニスをしごく片手を休めることなく、反対の手がサンジの内腿に滑り込み、左右に大きく割り開く。
外気にさらされた恥毛が恥じ入るように揺れた。
人並み外れてやわらかい股関節は大きく開き、目にまぶしいほどの白い内腿がゾロの目を射る。
そこに剣士は何度も紅い花を散らした。
そのたびにひくりと白い身体が跳ねる。
「よせっ…痕…つけ…んじゃね…ェ…」
喘ぎ声の下から絞り出すようにサンジが訴えるが、剣士はお構いなしだ。
自分のものだと刻印を刻むように内股に舌を這わせ、やがて尻の割れ目と昇っていく。
ついにその愛撫が後孔に差し掛かったとき、料理人の身体がふるっと身震いした。
何度つながっても、押し開かれるべきでない器官を嬲られるおぞましさは、薄れることはあっても完全に消えることはない。
特にサンジの後孔は、情事の後であっても、またしっかりとつぼまって鉄壁の守りで進入を拒もうとするのが常だ。
だからゾロは壊さぬように時間をかけて、丹念に施し、重なる肉襞を少しずつ開花させていく。
「あっ…はぅっ…あぁああっ!」
1本2本と差し入れられる指が増やされて、漏れる嗚咽を噛み殺していたサンジは次第にあきらめたように声を上げはじめた。
「挿れるぞ…」
そう囁くとサンジは閉じ合わせていた瞳を開いて、ゾロを見据えた。
「いつでも来やがれ…」
全身を桜色に染めながら、にぃと不敵に笑ってそう言う姿は壮絶で、ゾロのペニスにどっと血が集まる。
重いほどに怒張したそれを、充血した媚肉にずぶりと埋め込んだ。
(うくっっ!!!!!)
衝撃でのけぞった身体をなだめるようにさする。
亀頭の張り出しを押し戻そうとする肉のうごめきに逆らって、奥へと侵入させる。
根元まで深く結合して互いの陰嚢が触れ合うと、サンジがはぁっと長く息を吐いて、長くて細い脚を剣士の身体に絡ませ、ゾロ…と呼んだ。
その声に、かろうじて残っていたゾロの理性が吹っ飛んだ。
3度目だから…いや4度目だったかもしれない…サンジの負担は相当なものだ。
だから大事に扱ってやらなければと思っていた気遣いは、きれいさっぱり消し飛んで、ゾロの腰がサンジの腰に激しく打ちつけられる。
「んぁあっ!…」
ゾロのペニスが内壁のある一点を擦り上げて、とたんにサンジは甘い悲鳴をあげた。
「あっ!…やっ…あっ…あああッ……!」
執拗にそこを攻めると続けざまに高い声が上がって、サンジは身体を強張らせて激しく悶える。
その乱れるさまにますます煽られたゾロは、むき卵のようにつるんと白い尻に赤黒い肉棒を突きたて、手では反りたったサンジのペニスをしごき上げた。
「…ッ!…ゾロッ!…ああああああっ!!」
中心も奥も、同時に攻められて、淫らなうねりを全身に走らせ、サンジがぶるっと震えて射精の兆しを見せた。
「まだだっ!」
「離せっ…! クソ剣士っっ!」
放出しようという寸前で根元をぐっと握りこまれ、はけ口を失った熱がサンジを狂わせる。
イきたくてもおあずけをくった肉体が、がくがくと震え、悲鳴を上げる。
追い詰められて、激しく乱れていく身体を押さえられない。
視点が定まらない瞳からは涙が零れ落ちる。
「一緒にイきてェ」
そう言うゾロの荒い息さえも強い刺激となってサンジの身体を翻弄する。
そして「一緒に」というゾロの言葉はサンジの心を甘美にとろかす。
(クソゾロッ! んなこと言われたら、よけいにイっちまうだろうがっ!…)
「早くっ! ゾロッ!」
激しく抽送が繰り返される結合部が熱い。
「…あ! っ!… …ぁぁああぁぁーーッッッ!!」
ゾロの精が放たれたとたん、サンジのペニスのいましめが解放されて、白濁した液が噴き上がった。
翌朝。
(誕生日に周りの空気が険悪だったらかわいそう、か…。コイツのそういうとこが俺は好きだ。そうして穏やかにふるまってるコイツを見んのも悪くねぇ)
そう思ってつい剣士は
「毎日誰かの誕生日だったら毎日機嫌のよいコックを抱けるな」
と、にやけて言った。
とたんに料理人の蹴りが炸裂した。
いや正確には、腰がガタガタだったゆえに蹴りは炸裂未遂に終わった。
その代わり、
「バカだ」「アホだ」「あのあと機嫌よく朝までヤり続けやがって!」「覚えたてのサルか、てめェは」
「人間じゃねェ」「やっぱりマリモだ。脳みそがねェ」「いっぺん死んでこい」「コックは立ち仕事だって何度言ったらわかるんだ!」
などなど、この世のあらゆる罵詈雑言が炸裂したのだった。
(了)
すみません、やってるだけで…。聖夜に性夜な話をプレゼントしようと思いまして…(神への冒涜)
管理人的には、これでも、甘々でいちゃいちゃ度マックスです。
(2005.12)