突発的小話。とってもアホ。そしてお下品。ノベルコーナーに置くか迷うシロモノ。


冷蔵庫で見つけたもの




朝食後、サンジの背後から冷蔵庫を覗いたルフィが言った。
「サンジ、あれなんだ? ゾロのちんこみてェなやつ」
「こんのクソゴム! レディがいる前でなんつーこと言ってんだ!」
ぐいーんと手を伸ばして、冷蔵庫の中の「ちんこみてェなやつ」を取ろうとした船長を、サンジはすかさずムートンショットで蹴り飛ばした。しかしそれでめげる船長ではない。

「なあそれ、冷蔵庫の中にあるってことは食いもんだろ? 肉か? ちんこ型の肉か? それともホントにちんこ肉か? 牛のちんこかな?」
「だから、ちんこちんこ言うんじゃねェ! あれはちんこ型の肉でも、牛のちんこでもねェよ!!」
「…サンジ君」
「はいっ、なんでしょう、ナミすわんっ!!」
「サンジ君も言ってる」
「は?」
「航海士さんは、コックさんも船長さんに負けず劣らずちんこって言ってると言いたいのよ」
「ろ、ロビンちゃん、今…まさか…ちんこって…言った?」
ぼぼぼぼぼと顔を赤らめて尋ねるサンジはまたもや自分が問題単語を発したことに気づいていない。
ナミは呆れたようにアイスティのグラスを持って立ち上がり、女部屋で飲むわとラウンジから出て行った。
そのあとをにこやかに笑みをたたえたままのロビンが続く。

それをハート目で見送って、サンジははっと気づいた。せっかくレディお二人がくつろいでいたラウンジが、いまや自分と欠食ゴム猿だけ。
おまけにその猿は、サンジがナミとロビンに気を取られているすきに冷蔵庫の「ちんこ肉」にかぶりつこうとしていた。
「こら、返せ!」
「いいじゃねェか、まだ何本もあったぞ」
そう言いながらルフィは巻いてあったラップごとあーんとかぶりついた。
「ん? 肉じゃねェ…」
「だから肉じゃねェって言っただろ、このゴム猿が!!!」
慌ててルフィからブツを取り返して顔面にキックを数回お見舞いしてやった。



その日の午後。
「おやつの時間だクソ剣士!」
言葉と同時にサンジは芝生で昼寝をしていたゾロの腹にがんと踵を沈めた。
「普通に起こせって言ってんだろ!」
ゾロの文句にかまわずサンジは小声で囁いた。
「さっさと取りに行かねェと食われちまうぜ、てめェのちんこ」
「は?」
サンジはくすくす笑って甲板に広げられたシートを指差した。
女性たちはパラソルのついたテーブルだが、男たちはピクニックよろしくに甲板広げられたコットンシートにたかっている。その中央にある大皿の上にはうず高く積まれたクッキー。

クッキー? 先日の嵐で砂糖の木箱の半数が濡れたと言って、確かコックは湿った砂糖を慌ててジャムやなんちゃら(…サンジが聞いたらここで「コンポートだよ!」と突っ込みが入るところである)に使ってなかったか? クッキーなんかに使っちまったら調理用の砂糖が無くならねェか? いやそれよりも――。
これのどこが俺のちんこだ? ふつうのチョコクッキーだろ?
そう思いながらココアに似た色のクッキーを口に放り込む。ほのかに甘いがカカオの味ではない。
結構固いし口に入れたとたん「美味ェ!」と驚くような特別な味ではない。それなのに、なんとなくまた手が伸びる素朴な味だ。
そう思っていたのは女性陣も同じだったようで。

「サンジ君、これ、いつものサンジ君が作るクッキーとはなんか感じが違うわね」
「さすがナミすわんん! 保存食用に堅めに作ろうと取ってあったものなんですよ。食欲魔人のクソゴムがかじっちまったから焼いちゃったんですけど」
「このほんのりした甘さは何かしら?」
「こしあんですよ、ロビンちゅあん〜〜」
「あんこ? 言われないと全然わからないわ」
なるほどココア色と思えたのはあずき色か…。
だが、なんでこれが俺のちんこだ?
その疑問を口に出したら、すかさずサンジに蹴り飛ばされた。
「レディの前でちんこ言うな!!!!」
けれど本日、その単語を一番多く発しているのはサンジなのだった。


おしまい

お目汚し大変失礼致しましたっ! 
ちなみにルフィが冷蔵庫で見つけたものは寝かせ中のクッキー生地。
↓こんなのです。


ご感想はこちらから→(web拍手)


<簡単こしあんクッキーの作り方 天板約1枚分>
小麦粉150g
こしあん150g
バター60g

1.バターは室温に戻し(レンジでちょっと加熱してもいい)木べらで練ってカスタードクリーム程度に柔らかくする
2.1に、こしあんを混ぜてよーーく練る
3.小麦粉(できればふるったもの)を半分入れて混ぜ、だいたい混ざったらもう半分を入れてよく混ぜる
4.生地を二つに分けてよく練って棒状にしラップで巻く(上の写真参照)
  (うまくまとまらずにポロポロするようだったら、サラダ油を小さじ2杯くらい加える)
5.残りの生地も同じようにして棒状にした生地を冷蔵庫で3時間ほど寝かせる(時間が無かったら冷凍庫で30分)
6.5〜6ミリの輪切りにして天板に並べ、150度のオーブンで20〜25分焼き、そのまま冷めるまで放置。


ほんのり温かいときはカントリーマーム風のしっとりクッキー。
完全に冷めるとショートブレッド風の堅いクッキーになります。
もっと上品なさっくりした食感にしたかったら、卵白を粟立ててたものを加えてください。

(2012.09)