ぱた様から、拙絵「意のままに」への小説をいただきました!



ここにいるとどうしてバレたんだか

海軍による包囲攻撃下、四面楚歌

 「…何が拙かったのかな…。」

 「さぁな。」

 「あれか?昨日のレストランで、ルフィのアホがやらかした、隣のテーブルの料理強奪か?」

 「さぁな。」

 「それとも、ナミさんのあまりの美しさか?ロビンちゃんの隠しきれない艶やかさか?」

 「さぁな。」

 「フランキーの海パンのインパクトか?ブルックのアフロか?ウソップの鼻か?」

 「さぁな。」

 「ペットお断りのレストランに、チョッパー連れてったのが拙かったか?」

 「さぁな。」

 「……ああ…たぶんアレだな……トイレの入り口で、すれ違いざまにおれのケツ触ったクソ野郎、ぶっ飛ばしたヤツがいたっけなァ。アレだな?」

 「………。」

床に身を伏せ、外の様子を探りながら、同様に隣にうつぶせに転がるゾロへ、サンジは笑いさえ含んだ声で言った。

 「てめェのせいだ。」

 「おれだけかよ。」

仏頂面で、ゾロは吐き捨てた。
半身を起し、壁にもたれて天井を仰ぐ。


すれ違いざまに、ゾロの“宝物”に触っていった不届き者は、当然ゾロ自身の手で夜空の星になった。
相手もまた海賊であったことから、通報を受けて即座に海軍が出動してきたのは言うまでもない。

 「散開!!」

ナミの号令一下、麦わら海賊団は街に散った。
レストランの店主は「食い逃げだー!」と叫んだが、彼らが嵐の様に立ち去ったテーブルの上に、1万ベリー札が9枚置かれてあった。
割られた皿を勘定から引いてもトントンだが、店主は怒りをそこで収めた。


 「…早く船に戻らねェとな…ナミさん心配してるぜ…。」

 「ぐーっ。」

 「………。」



溜め息。

籠城戦には向かない建物。

突破するか?

 「…ま、海賊なんかやってんだから、静かに誕生日を祝いましょうって訳にもいかねェか?」

壁のカレンダーを見上げて、サンジは小さく笑う。
その眼を、そのまま隣で高鼾の男へ落とす。

記録(ログ)が貯まるのは明後日だからと、各自で宿を取った。
壁のカレンダーに丸をつけたら、「ガキ」と言って笑った。



 「あー!あー!んん!ん!!あ〜〜〜!!中にいる者に告ぐ!!抵抗を止めて、おとなしく降伏せよ!!自ら投降すれば命までは獲らん!!
 中にいる事はわかっている!!麦わらの一味、“海賊狩り”のロロノア・ゾロ!!もう1人は“黒足”のサンジだな!?わかっているぞ!!出て来い!!」
 「…うっせぇな…。」

殺気だった気配。
大勢の兵の足音、声、銃や剣の音。
一斉掃射を受けて、窓も壁も穴だらけだ。

 「…よくこの状況で眠れるよな…のんびりするのもいいけどよ、誕生日が逮捕記念日じゃ、天国でくいなちゃんが泣くぜ?」

 「眠ィんだよ。腹も減った。なんか食わせろ。」

無茶を言う。

 「…しゃーねーな…。」

言って、サンジは唇からタバコを放し

 「……!!」

 「………。」

銃撃で、穴の空いたガラス窓から冷たい風が入ってくる。
光が、ほんの少しゾロの髪を明るく照らしている。

 「……誘ってんのか?その気になっちまうぞ?」

 「…なんか食わせろって言ったからよ。」

間近で笑うサンジの唇に、もう一度それを重ね、ゾロは囁くように言う。

 「……このままここで、コトになだれ込むのと。」

 「………。」

 「……あいつら蹴散らして、サニーに戻ってなだれ込むのとどっちがいい?」

 「どっちにせよ、なだれ込むんだな。」

 「たりめーだ。戴くもん戴かなきゃ、はっぴーばーすでーじゃねェだろ?」

 「なんでしょーか?その理屈。」

怒ったような口調で言いながら、サンジは頬を染めて笑い、また、ゾロの頬を包んで唇を重ねる。
零れる光に、金の髪が揺れて微笑んだ。


 「てめェの誕生日だ。てめェの意のままに。」


言葉で答えず、和道一文字を手に取り、ゾロは不敵に笑った。



ぱた様が、拙絵「意のままに」に素敵な短文をつけてくださいました!(イラストはこちら→
私がつけた設定用の台詞までそのまま生かしてくださって、なおかつググッとかっこいいシーンに仕上がっています!
海軍なんて意に介さない二人に惚れぼれします〜〜〜!! 拙絵までかっこよく見える素敵SSをありがとうございました!