桜酔   …449話カラー表紙からの妄想小話



この島についてすぐのこと。
ナミが独特の勘をもって、パーティのアルバイトを見つけてきた。
何千本もの桜の下で三日間催される。

そのパーティは、最初はこの館のしきたりや掟や結婚の条件などを嫌って島を離れていった縁者たちを
一年に一度、せめて呼び寄せようと始まったものだったらしい。

掟はもともとは家系を守るためものだった筈だ。
それが時代とともに束縛に変わり、皮肉なことに一族を散り散りにさせて衰退させる原因となった。
だが、パーティのほうは年々盛んなり、今では周りの島からも参加者や観光客が訪れるほど有名だ。

ナミとロビンはパーティコンパニオン。
サンジはコック。
残りのメンバーはガードマン。
そうして海賊らしからぬ勤労にいそしんだ。

そのパーティ後。
客たちが帰ってから、館の領主からパーティに従事した者たちに向けて、慰労の夜会が催された。
皆、館に残っている古いドレスを借りて参加する。

衰退の一途をたどる家系とはいえ、館には繁栄していた当時のものが今もたくさん残っている。
ドレスもその一端だ。
女性用男性用問わず、礼装が豊富に残っている。
勿論すべて時代掛かったデザインだ。
だが、一族の痛みとは無縁な者にとっては、その古めかしさはむしろノスタルジックで悪くない。
それを身につけるのが楽しみで毎年このパーティのバイトをしているなんて娘もいる。

だが麦わらのクルーが全員、借り物の衣装ながら、
それなりに自分にしっくりと似合う夜会服に身を包んで宴の会場に集まっても、コックだけが遅れていた。



「コックの野郎、支度が遅ェ…」

従業員も全員無礼講で好きに騒いでいい、と言われても、厨房はまだまだ忙しい。
何しろ、その従業員達の無礼講パーティ用のつまみも作るのだから。
結局、仕事を切り上げるのが最後になる。
だから、サンジが遅くなるのは当然なのだ。

もっとも剣士がそこまで気づく筈もなく。
「どうせ女共のために、めかしこんでいるんだろう」くらいに思って少々不機嫌だ。

ナミの華やかさとロビンの妖艶さが周囲の目を引きつける中、剣士の視線だけが別の方向。
ようやく目的の人物の姿が現れた。
しびれをきらして待っていたことを悟られまいと、視線を外そうとして、ポカーーンと顎を外した。

「んの野郎っ、なんつーカッコしてやがんだ!」

コサージュのついたブラックスーツ。
そのの下には、ひらひらとフリルのついたドレスシャツを着ている。
そこまではいい。
問題はそのドレスシャツが透け透けであること。
おまけにシャツの前が大きくはだけられていること。

当然白い喉元も、胸筋も、その下の腹筋も見え隠れする。
白い肌と透けたシャツ越しの身体が見える部分は、ブラックスーツのVゾーンだけだ。
それは面積としてはわずかなものだが、それがかえってスーツの下の身体を連想させる。
胸元にある真珠のネックレスの先には、大きな蒼色の宝石がついている。
白い肌をいっそう際立たせるかのように。

何もかもが扇情的だった。



実は、いつもきっちりタイを結んでいるサンジが
今回に限って胸元を大きくはだけてきたのは、ゾロに原因がある。

サンジがようやく厨房から上がって、教えられた衣装部屋に向かってみると、
ゾロがちょうどそこから出てきたところだった。
遠かったからゾロは気づかなかった。
だが、サンジは、ゾロの姿をしっかり捉えた。

ゾロは軍隊の礼服をヒントにしたような金の胸飾りが連なる服を着ていた。
それをきっちり着込まずに、胸元を大きくはだけ、着崩した姿がゾロらしい。
はだけた胸から、逞しい肉体と袈裟懸けの傷が覗いている。
レディたちがゾロに釘付けになる様子が目に見えるようだ。

サンジの中でむくむくと対抗意識が沸き起こる。
レディの視線を独り占めさせてたまるか、と男としてのライバル意識が頭をもたげてくる。

身体が細いことに多少コンプレックスはあるが、
腹に綺麗に乗った腹筋を卑下するほどマイナス思考ではない。
「意外と逞しい」「見かけよりもやわじゃない」というのが、
外見からして筋肉隆々よりポイントになる場合もあると知っている。

そんな身体を証明するには、ゾロのようにシャツを大きくはだければいいだけだった。
そこをわざわざ透ける素材のドレスシャツを選んだのは、
ついでにゾロの視線も俺に釘付けにしてやれ、と思ったからだ。



案の定、剣士はサンジの格好に反応してきた。

「てめェ、なんだ、その格好は!」
屋内から桜の下に出たとたんに、ぐいと腕をつかまれた。

「どうもこうも、てめェばっか、モテてんじゃねぇぞ」
顎を心持ちあげて、ちょっと偉そうにサンジは言い返す。
自分が現れたとたん、周囲がざわついたことくらい、わかっているから。

ちょっと誇ったようなサンジの表情をゾロは見つめた。

「何だよ、呆けたように俺様に見蕩れてんじゃねェよ」
そう言って、にやりと笑うサンジの手をゾロが取った。
サンジの白いシルクの手袋の感覚が、ゾロのモスグリーンの革手袋越しに伝わる。
いつもと違う感触が、妙にそそられる。
思わずサンジの腰に手を回して引き寄せた。

それでもサンジは余裕の表情で手も腰もゾロに預けたまま言う。

「俺とダンスしてェなら順番待ちだぜ」

青い瞳を閃かせて不敵に笑うそのさまが…
     あまりにあでやかで。



「ダンスは俺の腹の上でしろ!」

言うが早いか、庭の奥へと掻っさらった。







「離しやがれ、このハラマキ! 俺を見つめていたレディ達が待ってんだよ!」

がっつり身体に回されたゾロの手をふりほどこうと、サンジはついに蹴りを繰り出した。
ゾロを弾き飛ばしたら、ギラリと魔獣の目が光る。

「ああ、女どもがてめェに目を奪われたってのはウソじゃねぇ。
だがな、男どもも、こぞって、てめェにイカレやがった!」
「はあ?」

「てめェは相変わらず、そっちの自覚が無さ過ぎなんだよ!」

サンジのブラックスーツが剥ぎ取られる。
シースルーのドレスシャツを身体に纏わせたサンジの身体が桜闇に浮かび上がった。







確かに『俺様がレディの心を盗むのを、てめェはおあずけくらった犬みてェに見てやがれ』と、
レディたちだけでなくゾロも煽ってやろうとは思った。
だが、ちょっと反応良すぎだろ、と、サンジはもがく。
まさかこんな戸外で身体を開かされるなんて…。

誰が来るかわからないという惧れで最初のうち押し殺していた声は、
手袋をしたままの指先で乳首をまさぐられ摘まみ上げられて、あっけなく零れ落ちた。
そしてその手はサンジの下着の中に侵入し、サンジの中心を握る。
肌とは違う薄い革手袋の感触に、握られただけで先走り汁が溢れてしまう。

「手袋がもうぐちょぐちょに濡れちまったぜ」
羞恥を煽るように言われて余計に吐息が上がる。
羞恥で朱を帯びた身体にゾロは目を細めた。
そしてその身体をシースルーの布越しに舐め上げる。

「ったく、エロい格好しやがって」

唾液を帯びた薄い生地がぴたりと肌に張り付き、ぷくりと立った乳首が透ける。
その艶かしさをたっぷり楽しんだあとに、尻を突き出させる。
突き上げるたびに薄い衣がひらひら揺れて、それが汗と精液でじとじとに濡れていく。

ついにサンジが、濡れた感触が気持ち悪いとそれを脱ぎ捨てて全裸になるのに時間は掛からなかった。全裸になったらなったで、それにまた煽られる。

「ったく、エロい身体しやがって」

『何言ってんだ色欲魔獣! さっきは俺の格好がエロいんだ、って言っただろうが!』
そう抗議したいのだが、快感の責め苦に、言葉は喘ぎに変わる。







大きな庭のところどころにある控えめなライトアップと月夜に照らされた何千本という桜の花のせいで、
夜とは思えないほど明るい。

その明るい中で、サンジは後ろから貫かれていた。

ここにもし人が来れば、自分の恥態は丸見えだろう。
そう思うから、熱さと快感だけでなく、羞恥からも身体がぽおおっと朱に染まる。



「あ、あ、、も、無理…っ…ゾロッ……」

猛り狂ったような背後の男に訴えるが、
「てめェが悪ィ」
噛み付くようにそう言われる。

もう身体の外も中もドロドロだというのに、ゾロの淫欲は止まることなくサンジを犯し続ける。



背後から貫かれたまま身体を起こされた。

「くあっ…」

狭い器官がさらに押し広げられ身体の奥に埋め込まれる圧迫感に息が洩れる。

だが、すでにぐちょぐちょに蕩けている孔は、サンジの抵抗を簡単に裏切ってくれた。
自重の力を借りてゾロの昂ぶりをズブズブと奥深く呑み込んでいく。
後背座位の形を取らされて、サンジの身体が隠しようもなく曝された直後、
周りの空気がざわりと揺れる。

え?

潜んだ気配を感じる。
それもひとつじゃない。

見られている?
どこから? 
誰に? 

有形無形の気配にゾクリと身体が慄いた。

「ゾロ…何か…いる…」
警戒した声を上げかけると、ゾロがサンジの耳元で囁いた。
「ああ、人だけじゃねェな。アイツらみんな、てめェに引き寄せられてきたんだぜ。
いいさ、誰だろうが何だろうが、教えてやる、てめェが誰のもんかってことをな」
「え? あ、あああっ…」

夜空を指して勃ち上がる己をきゅうと扱かれて、先っぽからたらたらと汁が零れてくる。

「へ、どこが無理なんだよ、悦んでるじゃねェか」
低い声で哂うように囁かれた。
その声にまたビクビクと身体が反応する。




「あ、あ、あ…」

乳首と尿道が同時に捏ね回された。
サンジは後孔にくわえ込んだゾロの逸物をぎゅうぎゅう締めしけて喘いだ。

淫靡な喘ぎが上がるたびに桜の花弁が散る。
サンジの身体がひくんひくんと反応するのに合わせて
自分たちを取り囲む何本もの桜がざわざわと揺れる。
まるで見物をする人垣のようだ。

「桜が…桜も…俺たちを見ている」

快感に朦朧とする意識の中で、闇に潜むたくさんの有形無形の存在を感じた。
その前で自分は何をやってる?
脚を大きく開かされて、恥ずかしい部分を曝して…。

「ああッ…」

サンジの身体がぞくりと震えた。




(了)





449話カラー表紙からの妄想です。
 ブツにはモザイクかけるということをすっかり忘れて、玉○のシワまで描いてた私。
 モザイクかけたら呆気なくシワはふっとんだけど、竿のほうは、モザイクかけてもかけなくても大して変わってない…。

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