「散歩に行くのだから、少しは、めかしこんでもいいだろう。最近は大型犬用のウェアもいろいろあるようだ」
そうおっしゃって、クロコダイル様が私に投げてよこしたものは、なんと黒の総レースのコルセットでございました。背中の部分の鳩目に紐を通してウェストを絞る、あの、コルセットです。
確かに昨今、服を着た犬を見かけることも珍しくありません。地位のある方々がお集まりになる品評会では、大型犬がビスチェドレスを着ていたりもするのですから、私が受け取ったものも驚くようなものではないのでしょう。
とはいえ、Mr.プリンスの細いウエストとそのコルセットの組み合わせは、驚くなというほうが無理というものです。驚かぬどころか、黒のコルセットによって尻の白さが妙に強調され、レースから透ける肌は艶かしく、Mr.プリンスの裸体を見慣れた私といえども、目のやりばに困るような妖しげな色香が漂っております。むしろ何もつけていないまっさらな裸体のほうがよっぽど青年らしい清々しさで見ることができるというものです。
更に目隠しをされて、身体を折らねば入らないような小さなケージにMr.プリンスは押し込まれました。そして庭まで運ばれたのでした。
今、眩しいほどの明るい陽光の中、手入れをされた芝生の庭をクロコダイル様はゆっくりと進んでいます。時折、手にしたリードをそれをくいくいとと引っ張って、後ろの「犬」の歩みを促します。「犬」の格好でクロコダイル様に強制的に散歩をさせられているのは、勿論Mr.プリンスです。手首と膝を短い鎖で繋がれ、建物の構造がわからないように目隠しをされたままの彼は、よろよろと四つん這いで進むしかありません。この姿勢に堪えかねて立ち上がろうとすれば無理矢理リードを引っ張られます。そうすると上体が前に引かれ、倒れないように四肢を踏ん張るのが精一杯です。
最初のうちこそMr.プリンスは、裸に剥かれた身体に尻尾までつけられて散歩プレイを強要させられる屈辱と羞恥に戦慄いておりました。しかし今では、慣れない運動と、動くたびに腸壁を苛む淫具のイボによる苦痛に耐えるのに必死のようです。全身に冷たい汗を浮かべ、口に嵌められたボールギャグの穴を通して、はぁはぁと苦しい息が零れます。閉じられない口の端からは涎が零れ、顎を伝って地に落ちます。
「これはこれは、まさに犬そのものですね」
ふいに耳に入った小さな声に、Mr.プリンスはビクリと身体を竦ませました。耳に入った声が、クロコダイル様の声でも私の声でもないと気づいたのでしょう。目隠しをされた顔が色を失くして、誰かいるのかと怯えた表情を見せました。
そこには確かに数人の方がお集まりになっておりました。お集まりの方々がどういう方なのか、私は存じ上げません。しかしMr.プリンスは、いくつかの声に心当たりがあるようで、先ほどから、わなわなと震えています。こんな屈辱的な格好を誰かに見られたいわけがありません。知り合いであったら尚更です。とはいえ、この惨めな身体を隠すことも出来ず、隠れることもできないのです。
それでも身体を丸めるようにして隠そうとしたMr.プリンスのリードをクロコダイル様は容赦なく引きます。哄笑の渦の中、Mr.プリンスはその場の中央に引き出され、照明灯のポールに繋がれました。
照明灯は、庭の木をライトアップするように木の傍に立てられておりましたので、Mr.プリンスが繋がれたところはちょうど木陰になっておりました。しかし、心地好い風が吹きぬけるその場でも、Mr.プリンスの気持ちが和むことはありません。至近距離に人の気配を感じるのでしょう。Mr.プリンスからはピリピリとした尖った気配が伝わってきます。皆様、あからさまに大声で笑ったりはしませんが、蔑むような含み笑いが絶えず冷たく響いています。
にやにやと酷薄そうな笑いを口元に張り付かせていた男性がおっしゃいました。
「そういえば、犬は、木の根元やポールなどにマーキングをするものですよね。この犬にもさせてはいかがですか?」
その声は、Mr.プリンスにも当然届きました。弾かれたように顔を上げ、目隠しされた顔を歪めました。
自分と他の犬のテリトリーをはっきりさせるために、犬があちこちに、おしっこによるマーキングをすることは周知のことです。この御方は、Mr.プリンスにそれをさせようとおっしゃるのです。
「ふむ…それも悪くないな…」
クロコダイル様が提案を肯定するお答えをなさったので、提案なさった御方は、気を好くして尚も続けました。
「ええ、犬らしく片足を上げて…」
その言葉に、まだ誰も近づいていないのに、Mr.プリンスが、じり、と後ずさりをしました。ボールギャグを噛みしめる唇が震えています。このプライドの高い男にとって、他人の目の前で排尿行為をするのは、どれほどの屈辱でしょう。それも犬のように片足を上げて…。
今まで様々な責め苦のお手伝いをしてきた私ですが、さすがにこの時はMr.プリンスが哀れに思えました。
クロコダイル様は思案するようにMr.プリンスを見つめました。目隠しをされていても、Mr.プリンスはその視線を感じたようで、身体を身じろがせます。クロコダイル様は、本当に彼に、ここで排尿させようというのでしょうか。私は思わず緊張してクロコダイル様を見つめました。が、クロコダイル様は、この提案を形だけ認めただけでした。もっとほかのプランがおありだったのです。
「おもしろい案だが、さほど水分も取っていないし小便をさせるのは無理かもしれんな。だが、マーキングなら出来るかもしれんぞ」
クロコダイル様は楽しそうにおっしゃり、淫具のリモコンが入ったポケットに手を差し入れました。そのとたん…
「んぅッ!!」
Mr.プリンスが声を上げ、ビクンと身体をしならせました。連動して尻尾がふるふると揺れます。後ろに埋め込まれた淫具が震動を始めたのです。
「う…んっ…んぅっ…」
Mr.プリンスの喉から押し殺したような音が零れてきました。淫具についたイボがローリングを始めているに違いありません。螺旋状にぐりぐりと動いて、Mr.プリンスの敏感な粘膜を擦りあげるのです。
「ううっ…」
呻きながらMr.プリンスが腰を引きました。身体を抱え込むようにして、刺激に耐えています。
このように身体を丸めて震えていたのではおもしろくないと思ったのでしょう。クロコダイル様は淫具の動きのレベルをもう一段階上げました。
「ひぁッ…!!」
Mr.プリンスの身体が大きく跳ねました。髪を振り乱すように振って、Mr.プリンスは股の間に手を差し伸ばし、尻尾を引っ張って淫具を取り出そうとします。が、短い鎖で動きが制限されている手は、尻尾にはどうにか触れることが出来ても、それが抜けるほど引くことができません。尻尾を引き抜くには鎖が短すぎるのです。
抜けることなくぴんぴんと引っ張るだけの動作は、逆に埋め込まれた部分に震動を与えます。抜こうと尻尾を引くたびに、逆に自分の腸壁に刺激を与えることになってしまい、Mr.プリンスがひくんひくんと震えました。それでも彼は、身体の体勢を様々に変えて、なんとか尻尾を抜こうと致しました。
淫具の責めが大層、辛いのでしょう。とうとう、私たちが見ているのも構わず、どうにか抜けないものかと、脚を左右に大きく広げてみたり、身体を横向きに倒して片足を上に上げてみたりし始めました。そのたびに、Mr.プリンスの中心で立ち上がっているピンク色の男性器や柔かそうな淫嚢が露わになるのです。
様々な恥ずかしい格好を試みても、どうしても淫具を引き抜くことは出来ないとわかったのでしょう。Mr.プリンスは、ついに尻尾から手を離しました。その手が諦めたようにぱたりと力なく投げ出されます。その間も、淫具はぐにぐにと動き続けています。
「うぅ…あぁ…あ…」
肩で息をしながら、切なげな吐息が漏れてきます。悶える細腰がまるで誘うように揺らめいておりました。
しばらくしてクロコダイル様が手招きして私を呼びました。近づいた私に手渡されたものは、とろりとしたオイルの入ったチューブです。Mr.プリンスに聞こえないように密やかにおっしゃられたご命令は、そのオイルを後口の入口に垂らせ、というものでした。
手足の動きを制限されているとはいえ敏捷なMr.プリンスの尻孔にうまくオイルを垂らせるものだろうかと、私は戸惑いました。
「ケツの割れ目に垂らせばよいのだ。そうすれば、オイルは孔に向って流れていくさ」
クロコダイル様がそうおっしゃって立ち上がりました。まっすぐMr.プリンスに近づいていきます。その間に私は、遠くを回ってMr.プリンスの後ろへ回り込むようにと、指示されました。
気配を感じて、Mr.プリンスが、身体の向きをクロコダイル様へ向けます。目隠しをされているのに、クロコダイル様の正面に照準を合わせるかのように身体をずらしたMr.プリンスに、感心致しました。背後に回った私の気配も感じているようですが、正面のクロコダイル様へ後ろを向ける気などMr.プリンスには無いのです。お陰で私は、ご命令どおり、Mr.プリンスの双丘の谷間に、オイルをたっぷり垂らすことに成功致しました。
「ひっ!」
冷たい液体が尻の谷間を流れる感触に、Mr.プリンスが身体を竦ませました。オイルは淫具で広げられた尻孔の襞をじわじわと濡らしていきます。敏感な粘膜がオイルの淫らな成分を取り込むのに、時間は掛かりませんでした。
肉筒の内部がじわじわと熱くなっていきます。そこを淫具のイボがぐりぐりと擦り上げます。くううと、嗚咽のような呻き声が洩れてまいました。
「…ああぁ…」
オイルと淫具で昂ぶらされた熱をかわそうと、Mr.プリンスが身体をくねらせ、腰を揺らめかせました。そのせいで尻尾も大きくぶるんと振れ、本当に獣のようです。美しく若々しい獣です。そして淫らな獣でありました。
「うう…う…ぁああ…」
喘ぎ声が零れる口枷の脇からは唾液が伝い落ちていきます。いまや彼の砲身は張り詰め、先端からとぷとぷと蜜が溢れています。それでも身体の内部を抉る刺激は、吐精できるほど強くはありません。
決定的な刺激を加えられないまま、炙られ続ける責め苦に、Mr.プリンスは、何度も自らの陰茎に手を伸ばそうとしました。ですが、淫具を抜こうとした時と同様、革で覆われた手の先が陰茎を撫でるだけで、握り込んでしごけるほどの自由は利かないのです。なんと巧妙に計算された鎖の長さなのでしょう。
「ああっ…んふぁ…はぁあっ…」
達することができずに、震え、のたうち、身体をくねらせます。手足を革で覆われてその白さを強調された裸身がじっとりと汗ばんでいきます。その艶かしい苦悶の姿に、ごくりと喉を鳴らす者まで現れました。Mr.プリンスは、その視姦の屈辱に抗うことも叶わずに、襲ってくる熱に苦しむ痴態を見物されねばなりませんでした。
そして頃合を見てクロコダイル様は最後の仕上げに入ります。目隠しでクロコダイル様の動きが見えないMr.プリンスに近づくと、その膝裏を掬い上げました。緊張と警戒で強張っていた身体を無理矢理蕩けさせられたMr.プリンスは、それだけでびくんと身体を粟立てます。そして抵抗する間も与えられないまま、脚をM字に開かされてしまいました。
「んっ、んんんっ!!」
目隠しをされていても、自分がどんな体勢を取らされているかはわかります。Mr.プリンスは、口枷の奥で必死に抗議の声を上げ、身体をよじって逃れようとしました。ですが、クロコダイル様の力にかなうわけがありません。クロコダイル様は開いた脚の中央でひくついている陰茎に、あのオイルを垂らしました。
「んんんんッッ!!!」
いやいやをするように頭を振って抵抗するMr.プリンスを押さえ込み、鈴口を指でぱっくりと押し広げると、クロコダイル様はその小さな孔を目掛けてオイルを流します。
「んぅぁあああッッッ!」
尿道口にじんじんとした疼きを感じてMr.プリンスが高い悲鳴を上げました。暴れるMr.プリンスの首についたリードを短くすると、Mr.プリンスの身体はポールに嫌でも引き寄せられます。クロコダイル様は、Mr.プリンスの身体をポールに縋りつかせ、内腿がポールを挟み込むような体勢を取らせました。股間に金属の冷たさを感じてMr.プリンスが腰を後ろへ引きかけたその時です。
「あっ…」
Mr.プリンスの口から、今までとは違う、甘さを含んだ声が洩れました。
自分の声の甘やかさに屈辱を感じたのか、Mr.プリンスがぐっと口元に力を入れました。そのまま頭をふるふると振って、オイルの薬効に炙られる苦悶に耐えようとしておりましたが、ついに彼は、そろそろと自分の股間をポールに近づけました。そして自分の陰茎をポールに擦り付けるようにして、ああ…と溜息にも似た喘ぎ声を漏らしました。一度そうしてしまうと、もう止まりません。
じんじんとした疼きをどうにかしようと、陰茎を冷たいポールに何度も擦りつけ、Mr.プリンスは腰を揺らめかせます。尻孔もオイルと淫具で嬲られ続けいるのですから、もう、達きたくてたまらないのです。
「ああ…ああ…う…はぁぁっ…」
ポールを股に挟み込み、Mr.プリンスが腰を上下に振り始めました。
「んぁあ…はぁっ…はぁっ…あああっ…」
激しいのに流れるように細い身体が蠢くさまは、艶かしく浅ましく…犬というよりも猫を思わせました。その気位の高い猫が、淫の奈落へと堕ちていきます。
「ひぁあっ…ああああっ…ああああんんんっ…」
金の髪を振り乱して身悶えます。白い身体がポールに縋りつくようにして激しく腰を振り始めました。もう絶頂を迎えることだけに夢中なのです。
「ひぃああああっ!」
ぶるりと身体を震わせて、ついに精液が放たれました。彼は、はぁはぁと肩で息をして、絶頂のあとの安らぎに身を委ねようとしました。しかし、未だ蠢き続ける淫具と、体内に流れ込んだオイルが、それを許してはくれなかったようです。
放出しても、股間は、すぐさま芯を持ち始め、出口を求めてMr.プリンスを苛みます。終わらない苦悶と屈辱に、じわりと目隠しが滲みました。自分がどれほどの痴態を見せているかわかっていながらどうすることもできません。
ゆるりとMr.プリンスの腰が揺れ、ポールに吸い寄せられるように、再び起ち上がった中心が近づいていきます。両手がまた、すがるようにポールを握り締めます。
「あぁっ…」
どうにもならない身体を憂えるような切ない吐息を漏らしながら、艶かしい動きが再開されました。
私たちは、ポールが白濁液でどろどろになるまで、彼の「マーキング」行為を見物したのでした。
わー、すみません、プリンスにこんなことさせて。でも、わんこは、お散歩の時、マーキングするものだし…。