恋するジーン
 TEXT by 翼嶺様 / ILLUST by 恋川珠珠



「没収」
「なっ、ちよっ、サンジつっ! それは俺の秘蔵中の秘蔵本だつっ!」

右手に掲げ持った雑誌に取り縋ろうとするウソップを、蒼く冷やかな双眸が一瞥する。

「ロビンちゃんに言いつけないだけでもありがたく思いやがれつっ! 大体てめぇには、
勿体無くも可愛らしい『カヤちゃん』って恋人いんだから、こんなエロ本、見てんのは
裏切り行為じゃねぇのか? あン?」

凄みのある顔は、流石は元『不良』と呼ばれていたと言うべきか…だがしかし…

「それとこれとは別もんだろう? …返してください、『お兄様!』」
「うるせぇつっ! んな時ばっか、『お兄様』とか言ってんじゃねぇよつっ! それに、てめぇは
チヨッパーと同じ部屋で、んなガキがこんなん見たら、教育上良くねぇだろう?
兎に角これは俺が預かっておく」

そう言い捨て、サンジはウソップ秘蔵のエロ雑誌を没収したまま、自室へと帰った。


「大体まだガキのクセしゃがって、エロ本なんか隠し持ちやがって。カヤちゃんって
可愛い彼女がいんのに申し訳ねぇって思わねぇのか? ったく」

部屋に戻ってもブツクサ言いながら、ベットの上にと雑誌を投げ捨て、そのまま
バイトへと向かった。

サンジは6人兄弟の2番目だ。
ひとつ上に兄。自分のひとつ下に妹。そしてその下に双子の弟。さらにその下に
中学生の弟。そして両親に、母方のじいさんと今時珍しい9人と言う大家族だ。

父親のフランキーは、なりはチンピラ風情たが、実は人情に熱い腕のイイ大工。
母親のロビンは、大学で考古学を教える才女。
祖父のブルックは、若い頃ちよっと有名な音楽家だったらしい。
ひとつ上の兄、ゾロは大学生。
妹のナミは高校生で、受験生。
双子の弟、ルフィとウソップは高校2年。
末弟のチヨッパーは、中学生になったばかりだ。
両親、祖父と年齢に関係なく名前で互いを呼び合っている。
家族仲はもちろん、兄弟仲もいい。サンジの自慢だ。が、ただひとつ。
ひとつ違いの兄とサンジの仲は、大変よろしくないのが現状。
…嫌、ある1点の事柄に関しては、非常に仲の良い兄弟であった。

幼い頃、サンジはおにいちゃん子だった。
サンジの幼い頃の記憶には、何時も兄の背中があった。
ひとつしか違わないが、そのひとつと言う年の差だけで、幼いサンジには兄の背中は
広く逞しい物として映っていた。
本当は速く歩けるのに、サンジが着いて来るから、ゾロは歩幅を小さくし、時折り
立ち止まっては幼いサンジが見失わない様にいてくれた。
そんな優しい兄の背中を、サンジは何時も追い掛けていた。

それが、中学生になった頃からゾロが自分を避け始めた。
理由も判らないまま、邪険にされ、それを切欠として、サンジ自身中学に上がった頃には
荒み始め、その内に『不良』のレッテルを貼られ、文武両道で『優等生』の兄と何かと
比較され続け、それが余計にサンジの苛立ちにと拍車を掛けた。
それでも、それなのに、サンジはゾロの後を追う様にゾロの入った高校へと入り、
結局、サンジは苛立ちを募らせ続ける事になった。

その後、ゾロは大学へと進学し、サンジは高校卒業後、昼間は調理師の専門学校へ
夜は親戚の経営するレストランで、コック修行のバイトをしている。
サンジは幼い頃より料理をする事が好きだった。
自分の作った料理や菓子を家族が幸せそうに食べてくれる姿を見るのは、至福の
喜びだった。それだけは、『不良』のレッテルを貼られても変わらなかった。


バイトが終わり、家へと帰り着くのは何時も0時を回っている。
バイトから戻り、部屋に入ると何時もなら高鼾て寝ている筈のゾロが、珍しく起きていた。

「…お疲れ…」
「おう…」

何故かサンジのベットに腰掛け、ペラペラと雑誌を見ている。

「自分のベットに行けよ」

幼い頃より、サンジとゾロは部屋が同じだった。
ゾロとの間に亀裂を感じた時に、別々の部屋を両親に希望したが、聞き入れてもらえぬ
まま、今日まで来ている。

「てめぇこんなの見て、抜いてんのか?」

低く聞こえた声に、部屋着に着替えを済ませたサンジはゾロにと視線を向け、その手元
の雑誌に気付いた。

「ゲっ…」

無造作にベットの上にと投げ捨てたままにしていた、ウソップ秘蔵中の秘蔵のエロ本。
だが、ウソップの名誉の為にもその事実は言えない。

「わ、ワリィかよ…俺は健全な19歳だ!」
「てめぇ昔っから乳でかい女好きだよな…」
「男のロマンだろうが?」
「脂肪の塊だろう?」
「なっ…どう言う言い草だ? じゃあお前は胸のないレディがお好みかよ?」
「んーそうだなぁ…」

ゾロは手にしていた雑誌を閉じると、そのままそれを片手にサンジに近づき、手を
伸ばして来た。

「!!」
「俺は、でかさより…感度だな」

ゾロの指先が、Tシャツの上よりサンジの胸元を掠める。

「っ…」
「んな風にちよっと掠っただけで、硬くなる様な…」

Tシャツの上から判るほど、明らかに触れられた方の胸元は隆起している。

「相変わらず感じやすい体だな…」

耳元に意地悪く囁かれた低音に、サンジの白い肌が朱色に染まる。


高校に入学してからサンジは、何故か男に『求愛』される日々が続いた。
その度毎に、『ふざけんじゃねぇーつっ!!』の怒号と、自慢の一撃の蹴りと共に沈めた。

そもそもサンジは、幼少の頃より徹底した『女尊男卑』を貫いている。
『不良』のレッテルを貼られていても、女性に対する紳士然とした態度は、
女生徒達はもちろん、女性教諭達からの評判も良好な物だった。…のに、色恋込みで
サンジに接近する女子は皆無。
偶に頬を染め、近づいて来た子がいたと思ったら、それは皆兄のゾロ目当てで、サンジへ
その仲介役を望む者ばかり…。
女の子の願いであるなら、嫌でも断われないサンジは、渋々と、女の子達のゾロへの
手紙や貢物を運んだ。その全てをゾロは直接、一刀両断するが如く、断わっていた。

「面倒くせぇなぁ…直接言ってくりゃあその場で断われんのに…」
「!それができねぇから俺に頼んでくんだろうがつっ?!」
「てめぇもう仲介なんかしてくんなつっ!」

そんな言い争いは中学から続き、『高校に入ったら絶対可愛い彼女を作るのだ!』と
心に固く誓っていたのに、実際言い寄ってくるのは何故かむさい野郎ばかりで、その上
相変わらず、ゾロへの仲介は絶えず、サンジのストレスはピークに達していた。
そんなストレス解消も含み、自室で自慰に耽っていた所、部活動で遅い筈のゾロに
その現場を目撃された。

「鍵くらい掛けてしやがれ」

後ろ手に部屋の鍵を掛けながら、ひくひくと引く付いた自分のペニスを握り、羞恥に惚け
たまま固まっているサンジの側にゾロは歩み寄る。

「エロいツラしやがって…」
「…え?」

舌打ち交じりにぼそりと呟かれた言葉は、サンジの耳に届かなかった。

「…嫌、もっと気持ち悦くイカせてやるって言ったんだよ」
「な、なに…?」

戸惑うサンジを他所に、ゾロは軽々とサンジを膝の上に、向かい合わせに乗せ上げる。

「…っ」

ズボンの前を寛げると、半勃ちとなっている自分のペニスと先走りに濡れそぼっているサンジの
ペニスを大きな掌に包み扱き始めた。

「! …っん、な、なに…ゃ…」

ゾロの掌の中で、ぐじゅぐじゅと濡れた音に煽られながらサンジは先に吐精したが、ゾロのが
固く、熱くなり始めるのを感じると、萎えたばかりのサンジのモノも再び力を取り戻し、ゾロが
イクまでに2回、イッた。
それ以降、何故か自慰はふたりで一緒に行っていた。

…だってひとりでやるより・・・気持ちイイし…

と言い訳を続けながら…。

互いの性器を擦り合わせていただけの行為には、やがて濃厚なキスまで付いて来て、
気が付けば、サンジは乳首での快感をゾロによって開発されていた。
…流石に、挿入まではしていないが、後孔に指を挿れられ、前立腺を刺激される快感まで
何時の間にやらサンジの体は覚えてしまった。
性欲を満たし合う。その1点に関してのみ『仲良し』なふたりだった。

ゾロが大学に入るまでは、殆ど猿並みに盛っていた。
今思えば、ゾロが受験勉強をしている姿をサンジは見た覚えがない。
夜、ふたりっきりになると、どっちらからともなく手を伸ばし自慰に耽っていた。
良く大学に合格出来たと思う。
大学に入ってから、その行為はめっきりと減った。
週4回あったそれは、月1回。
サンジ自身、コック修行を始めてからは皆無と言っても良い。
それが、久方振りに触れられ、毎日の忙しさに忘れ掛けていた欲が点った。
下唇を噛み、上目使いにゾロを睨む。

「…折角だからこれ見て抜いて見せろよ…好き、なんだろう?『巨乳』が…」

目の前にと付き付けられた雑誌とゾロを交互に見る。
このまま、以前の様にふたりで雪崩れ込むと思っていたのに…。

「見ててやるから…自分で扱いてイケよ…」

肩を押される様にして、サンジはふらりとベットの上にと導かれ、着替えたばかりの部屋着の上を
剥ぎ取られた。

「これなんか、てめぇの好みだろう?」

何故か抵抗も出来ないまま、ベットの上にと乗り上げたサンジの足元に、ページを開いた
雑誌を投げ置いた。

たわわな胸を強調する様に胸の下で腕を組んだ明るい髪色をした女が右ページ。
左のページには、足を大きくM字に開き、そこを隠す様にバイブを両手に持ち、下唇を舐め、
挑発的な視線を向けている女。
ウソップから奪い取った時は、パラリと見ただけだったそれを直視し、サンジの咽喉が鳴る。

「暫く抜いてないから、溜まってんだろう?…それとも他所で抜いてんのか?
ま、その様子じゃ久し振りって感じみたいだけどな」

ゾロの視線が捉えたそれは、スウエットのパンツの下からでも完勃ちしているのがまる判りだ。

「下も脱がしてやろうか? さっさと脱がねぇとそこだけ色、変わってくるんじゃねぇか?」

揶揄を含んだ言葉が図星を指している。その事を悔しく思いながら、ヤケクソ気味ながらもサンジは
緩慢な動作で下着ごとスウエットを脱ぎ捨てた。

「こんなのをおかずにして妄想してんだろう? 今更てめぇのイク所なんて飽きる程見てんだ、
さっさと扱いてイッちまえよ。それとも、ひとりでヤルやり方、忘れたか?」
「…っ」

『飽きる』
その言葉が、鋭く胸に突き刺さった。

そっか…ゾロはもう俺に飽きてたんだ…。

不意に突き付けられた現実は、ひどく自分を傷付けたのに、欲の点った体は、冷やかにも見える
ゾロの視線にすら感じ、快楽を求め疼く。
サンジはおずと手を伸ばし、先走りが滲み出した自らのペニスを扱き始めた。

「ん…っ…」



サンジの視線はあくまでも、足元に広げられたグラビアにと向いていたが、視力はそれを
捕らえる事なく、全身がゾロの視線だけを感じていた。

「あっ…や…」

噛み締める唇から嬌声が漏れる。

「そんなやり方じゃあ物足りねぇだろう? ケツにも指挿れて弄んねぇと…教えてやっただろう?」

聞こえた声に、サンジは潤んだ瞳でゾロに視線を向ける。
視界の中に下唇を舐めるゾロが映る。
欲情した眼差しに、どくりと心音が昂ぶる。

『…んだよ、欲情してんじゃねぇか…嫌、俺が戻る前…これ見てたんだっけ…』

足元のグラビアにちらりと視線を向ける。

『やっぱ…女の子は柔らかそうだよな…・。』

そう思うと胸の奥がちりりと痛んだ。

ゾロは20歳になった今も、家に『恋人』らしい人を連れてきた事がない。
その事でよく、妹のナミに揶揄されていたが、サンジは知っていた。
何度かゾロの体から違う匂いの香水が漂っていた事を…。
女の子達の健気な告白を、一刀両断に切り去り続けながらも、ゾロにアプローチする女の子達は
今も絶える事ない。
大学に入ってからは、適当に遊んでいる様である。
弟と自慰をし合うより、それはずっと健全な事だと、サンジは頭では充分理解していたつもりだった。

『俺に『欲情』しやがれつっ!』

その思いが何を意味するのか、それには敢て気付かぬ振りして、サンジは足を広げ、ゾロに
言われたがまま、自らの秘所にと指を当てた。
暫く触れる事のなかったその箇所は、固く閉じていたが、何度か指で触れ続けると、そこでの
快感を思い出した様にピクピクと物欲しげに反応を始める。

「っ…ん…」

異物感に耐えながら、後孔にと指を増やしながら、片手は止まる事無くペニスを扱いていた。

「うわ…んっ…」

何年ぶりと言って良いひとりの自慰は、なかなか決定的な快感をサンジに与えてはくれず、その
もどかしさに、サンジはゾロをみつめる。

「…ゾ、ロっ…」

無意識に紡ぐ名。

「っ…」

弾かれる様にして、ゾロが動いた。
下肢で蠢くサンジの両手を奪い、自らの片手で一纏めに掴むと、ベットの上にと押し倒し、その上にと
覆い被さった。
熱波の様な空気がサンジを包む。

「てめぇが名前を呼ぶから…」
「な、に…?」

耐えられぬとばかりに、ゾロは緩く開いたサンジの後孔にキツイほどに張り詰めていた自身の欲情の
証を推し挿れた。

「っ…あっ…」

指とは比べる事が出来ないほどの圧迫感を感じる間もなく、サンジは白い腹に白濁を散らしていた。

「…うッ…そ…」

ありえない場所に、指以外のありえない物を挿入された瞬間イッてしまった事が信じられず、
サンジの肌は羞恥に色付く。

「っく…可愛い過ぎんだよ! てめぇはつっ!!」

言いながら、ゾロはサンジの片足を肩にと担ぎ、我慢できないとばかりに激しい抽迭始めた。

「あっ、やっ…ロ…ダメ…だ…」

指で散々甚振り啼かせた箇所を、熱く猛った砲身の切っ先で攻め立てられ、イッたばかりの
サンジの身体は過ぎた快楽に喘ぎ身悶える。
射したばかりだった筈のサンジのペニスは、再び硬く勃ち上がり、先端よりじわりと先走りを
滲ませる。

「好きなだけイッちまえ…」
「…や、…ゾ…キス…」

部屋の外にと声が漏れてしまう事を嫌い、強請るように突き出されたサンジの唇を、ゾロは噛み
付かんばかりの勢いで貪った。
ぺちゃぺちゃと互いの唾液を分け与え、混ぜながら、サンジの鼻からは甘い息が漏れる。
深く繋がった箇所からも濡れた音が聞こえ始める。
挿れたまま、何度ゾロは達したか?
揺さぶられるまま、何度自分の身体を、ゾロの肌を濡らしているのか…?
そこは、焼けるように熱かったが、じわじわと競り上がる様に何度も押し寄せる快楽に、
何時の間にか、サンジの両足はゾロの腰にと絡み付き、自由になった両の手は、さらに深く
求める様にその背中を掻き抱いていた。

ずっとずっと大好きで追い続けていた背中。

ずっと認めたくないと思っていた感情。
家族の誰に対しても違った感情で、サンジはゾロが好きだった。
それが『恋』と気付いたのは、女の子達にゾロの仲介を頼まれ出した頃。
『嫉妬』を覚えた。
頬染め、屈託のない笑顔と共に、ゾロが…ゾロ先輩が・・・ゾロくんが・・・『好きなのだ』と
プレゼントや手紙を渡して来る。その全てを目の前で握りつぶしそうになったのは、1度や
2度じゃない。
その度毎に頭を振り、否定し続けた。
はっきりと自覚したのは、ゾロに自慰を目撃され、そのままその手でイカされた時。
死ぬほど恥かしかったが、嫌悪は沸かなかった。
寧ろもっと触れていて欲しいとさえ望んでいた。
欲求を満たすだけの行為であっても、ゾロが自分を必要とし、触れてくれる事が嬉しかった。
それでも、家族だから、兄弟だから…男同士だから…知らない振りを、認めない様にして
いたのにゾロの熱を深く体内に感じてしまった今、自分はゾロから放れられない。
ゾロは自分に特別な感情を抱いているワケじゃないのに…。
そう思うと、サンジの蒼い瞳からぽろりと涙が落ちた。

「どうした? どっかいてぇのか…?」

唇が解放され、聞こえてきた優しい声音が余計に涙を誘う。

「それとも、やっぱイヤか? わりぃな…ずっと、何年も我慢していて、押さが効かねぇんだ」
「が、まん…?」

思い掛けなく聞こえた単語に、ゾロを見つめる。
汗で湿り気を帯びた金糸を梳きながら、ゾロは観念した様な笑みを返した。

「ああ。ずっとてめぇを俺だけのもんにしてぇって思っていた」
「嘘だつっ!」
「っ…てめっ、でけぇ声出すな…締まる…ってなんで嘘だ?」
「…飽きた…って言った」
「あ? …んなの言葉のあやだろう?…悲しかったのか…」

その問いにサンジは緩く首を横に振った。

「悲しくなんか、ねぇ…痛かっただけだ…それに、中学になったら…俺を避けた…」
「そりゃあ避けんだろう? 中学にもなっていないガキを押し倒すワケいかねぇだろう? なるべくてめぇ
と視線を合わせねぇ様にしていたのに、てめぇはガキん時のまんま、俺に着いて来るし…まぁ、
それはそれで可愛いかったけど、俺にとっちゃ苦行だった…」
「ん…」

繋がったまま語られる言葉は、サンジの奥にその振動を与え、快感を齎す。

「だから締めんなって…」

苦く笑いながら、僅かに浮き立ったサンジの背に掌を当て、撫で擦る。

「てめぇは年毎に可愛くなるし、女と俺の仲介なんかするし…変な野郎どもには言い寄られてるし
俺は苛々しどおしだ。そんな時にひとりHの現場まで見せられて…てめぇが嫌がらねぇから
好き勝手した。何回てめぇの中に挿れてぇって思ったか…俺が悦くしてんのに、あんな雑誌なんか
隠し持って…」
「…最近…悦くしてもらった覚えねぇ」

どこか不貞腐れた声音に、ゾロは笑む。

「…もう限界だったからな…てめぇに挿れたくて仕方なかった…でも、な…兄弟だし…
挿れさえしなけりゃ…そのうち諦め切れるかとも思った…でもてめぇがエロいツラして
俺の名呼ぶから…我慢できなくなった。今日まで我慢していた俺を褒めろ」
「…褒めるか…」

呆れながらも何処かしあわせそうに笑んだサンジの表情をゾロは見逃さなかった。

「こんな風にてめぇとひとつになっちまったから…もう俺はてめぇを放せねぇぞ…」
「放すなよ…」

囁くと共に、求める様にゾロの背を抱く手に力を込めて、深く引き寄せた。

「…んとに良いのか? てめぇ女が好きだろう?」
「…ゾロ…も、だろう? …何人かと、寝た事…あんだろう…?」
「ああ。ある…てめぇの代わりにな…何人か遊び慣れてるのと・・・寝た…」
「んだよそれ…」
「仕方ねぇだろう…本当はてめぇに挿れたかったのを…耐えていたんだから…」

何処か拗ねた子供の様に聞こえた声が嬉しい。

「…も、俺だけ…だよな?」

無意識に小首を傾け聞いてくる表情にゾロは息を詰める。

「お前…っとかわいすぎんだろうがつっ?!」

辛抱溜まらんとばかりにゾロは動きを再開した。

「いゃ…あッ…」

ゾロの動きに合わせる様に、サンジの性器からはポタポタと止まらぬ体液が滴り落ちる。
ゾロに欲しがられている。愛されているのだと、体感するほどに、サンジの身体は悦楽に
溺れ続けた。



互いに精根尽き果てながらも離れ難く、ゾロの腕を枕にしてサンジはその広い胸元に頭を寄せる。
未だ夢心地のサンジは、先ほどまでの事を反復する。
喘ぐ声は全てゾロに飲み込まれながらも、体全体でゾロを求め、欲しがった。

「放さねぇからな…」

天井をみつめたまま、ぼそりとゾロが告げる。

「おう。放すな…」

照れを滲ませながらも、ぶっきら棒に返事を返したが、やがて何かを決意した様に、サンジはゾロを
みつめる。
その眼差しに気付いた様に、ゾロもまたサンジへと視線を向けた。

「…愛してんぜ…」

重なる言葉。

「家族、兄弟だからか?」
「兄貴なんて、思った事ねぇよ…生まれる前から、俺はゾロを思ってた」

破顔一笑。

「てめぇそんな口説き文句、何処で覚えて来た?」
「本当の事だ」
「・・・俺も、てめぇに会えるの、楽しみに待ってた」

降りて来た唇はしっとりとやさしく触れて、それだけでサンジを幸せにした。


後日談

「てめぇらふたりの部屋、防音処置した方がいいか?」

久し振りに家族全員揃った食卓で、父であるフランキーが徐に口を開く。

「あら、それは良いわね。今のままだと教育上あまり良くないし」

ゆったりとした笑みを浮かべながら、母ロビンがそれに答える。
それに無言で頷くウソップ。
会話を気にする事無く、ガツガツと食事をするルフィとチヨッパー。

「受験生がいる事、忘れられると困るのよね…あ、いっその事、ふたりの部屋下にすれば?」
「そうね。天井が揺れるのも気にはなるから、それも良いわね」

ナミの提案に頷くロビン。

「おい、おい…そんな華奢に建てた覚えはねぇぞ」
「若いから…ね?」

ロビンの眼差しが優しく年長ふたりに注がれる。

「だったら私とゾロさん達のお部屋、交換しますか?」

祖父のブルックが名案とばかりに手を打つ。

「ゾロとサンジの部屋、1階になるのか?なんでだ?」

チヨッパーの瞳が答えを求める様に、ロビンを見る。

「サンジくんがゾロのお嫁さんになったから」

ロビンとナミ。女ふたりの声が重なる。
これまで知らぬ振りを決め込んでいたゾロが、飲んでいた味噌汁に咽る。
フランキーの言葉を聞いた瞬間、固まったサンジは石化を始める。

「…男でも嫁さんになれんのか?」

ハムスターが如く、頬袋を一杯にしたルフィが聞く。

「なれるわよ。気分だけど…」
「じゃあこれからもまだみんな一緒にいられるんだ?」

弾むチヨッパーの声。

「ええ。これからもみんな一緒よ」

そんな感じで、今日も賑やかに幸せな…そしてなにも変わらぬ家族の光景。


(了)


翼嶺様が、拙絵に素敵なSSをつけて下さいました!

「書き進めてます」という途中報告を聞いているときには、てっきり海賊ZSだと思っていたので、
兄弟ものSSに、新鮮な驚きを感じていますvv
そうかー、こいつら、二人きりで同室なのか〜〜〜vv
二人で同室というだけで、もうニマニマ〜〜〜〜と顔が緩んでしまいましたよ!
ソロの言葉攻めになおさらうへへーとオヤジ笑い。
でも、イく時は自分の手じゃなくて、ゾロチンなのね! おう、こういうところが翼嶺様らしいvv

翼嶺様、素敵な作品をありがとうございました!! 
ラフ絵にはもったいないほどのSSで、こんな素敵なSSがつくのなら、もっときちんと描けば良かった、と、
絵の大雑把さが悔やまれますー(泣)


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