2012,11,10-2012,11,11 vol.5/7

ぐう様


5. 11月10日 未明



頬に指先を感じて目を覚ました。
誰かの手が目に映った。
寝たまま顔をまわしてその誰かを見る。
寝ているのがどこかは解らなかった。晩ご飯をいただいた座敷のようなそうでない部屋のような。
あたりは薄暗いがまくらもとの小さな豆電球がオレが寝ている横に座る男をかろうじて照らす。

見たとたん、ああ、夢だなと思った。

平安時代の武士っぽいいでたち。
今年の大河ドラマ、前半は見てたんだよな。
その衣装そっくりの姿だ。
膨らんだ袖の単に袴、頭に左右に毛がついた冠。座る左側の床に太刀。
顔つきがよく見えないがなかなかにいい男の顔だ。
小さく唇を動かして男の名を言ってみる。「ゾロ」
夢だな。都合のいい夢だ。
男がゆっくりと自分の頬を撫でる。
低く通る声で一言、
やっと会えた
と言った。
遠距離間で半年会えなかったときのせつない気持ちが蘇る。
大きな手に自ら頬を摺り寄せた。
やっと会えた。
その言葉は自分が自覚しない深い心の底に響いた。
目を閉じる。また眠りに落ちた。