純情サバイバル #4


ゾロシアは銃を一旦サンジの口内から外した。
そして、はだけたガウンを乱暴に引き抜いて下着の上から急所をぐっとわし掴んだ。
とたんにサンジの身体がぐっと強張る。
それでも、自由になった口からは、強気の発言が飛び出す。
「どういうつもりだ! 何もしねェって約束しただろうがっ?」
「ああ、約束したな」
「だったら、さっさとどきやがれ」
「約束通り、何もしなかっただろ、一昨日は」
本当は一昨日もゾロシアの理性はギリギリのところにあった。
深い眠りに落ちながらも、時々苦しげに顔を歪ませるサンジの表情がクるのだ。
元気になってしまったムスコをなだめるのに、どれだけ苦労したことか。

「ほー、ありゃあ、あん時だけの約束だったって言うのかよ? ハメやがって、クソミドリ」
「まだハメてねェぞ」
「そのハメるじゃねェよ、ハゲ」
「それより、テメェのほうこそ言ったよなぁ、好きにしろ、ってよ」
「なに?………」
「男に二言はねェよなぁ? ありがたく、好きにさせていただくぜ」
そう言ってにやりと笑ったゾロシアは、再び銃をサンジの口腔に突っ込んで言った。
「下着を取って股を開け」

まるで黒いペニスのようなサイレンサーを口に銜えさせられながら、サンジは仰向けに寝た体勢で腰を浮かして下着をずらす。
ゾロシアの目は、明らかに欲情していた。
(やべェよ、コイツの目…。こりゃ、もたもたしてっと俺まであてられて…起っちまう…)

自分に劣情する男の視線なんて気持ち悪いだけだった。
それなのに、今は『この猛獣が俺を見て起ててるのか』と思うと、誇らしいような、優越感のような…。
不快じゃないばかりか、自分の身体を舐めるように見つめるその視線を感じだだけで、ぞくぞくクる。

それを悟られまいとサンジは無造作に下着を取って、覆い隠すものの無くなった股を、ことさら事務的に、かぱっと開いた。
するとゾロシアは股の中心にある男の証にがぶりと食らいつこうとする。
そのせいで銃を持つ手元が甘くなったところで、サンジはすかさず銃を銜えた口を自由にした。
銃口は今でも自分に向いているが、ゾロシアがセレクト・レバーをオートにする気配はない。

追っ手から逃すようにパーティ会場から連れ出したかと思えば、サンジの怒りを煽るようなことを言う。
そうかと思えば安心させようと抱きしめてくる。
かと思えば今は蹂躙しようとする。
(コイツの考えはちっともわかんねェ…)
サンジはそう思うが、ひとつだけピンと感づいたことがある。
(コイツはなぜだか、俺を死なせたくねェらしい。今も、銃で脅しはするが、安全レバーを外してねェし)

「なあ…」
サンジは、自分の身体に食らいつこうとするゾロシアを押し留めて言った。
「なあ、なんで俺を助けた?」
「なんとなくだ」
「パーティ会場で追われてたのは俺だとわかっていただろう? とっつかまえて引き出せばてめェの手柄だっただろうに、なんで、あそこからこっそり連れ出した?」
「さあな」
「俺を人質にしようとか? ゆすりのネタにしようとか?」
「んな面倒臭ェことするか」
「俺を助けて、なんのメリットがあんだ?」
「さぁ…? てめェを助けると、なんかいいことがあんのか?」
「俺が聞いてんだよ」
「損得考えて助けたわけじゃねェ。死なせるには、ちょっとばかし早いだろうと思っただけだ」

「てめェのキツイ瞳が気に入った」なんて、当然本人に言う気はない。
だからゾロシアの答えは、はっきりしない答えばかりだったが、答えるそばから、堪え性無くサンジの身体のあちこちをついばむ。まるでそれが答えだとでも言うように。

サンジはついに質問を諦めた。
ふううと息を吐いて、ゾロシアの腰に長い脚を絡めた。
「借りを作ったままなのは、気にくわねェ。俺を犯してェならちょうどいい。命もらった恩は、この身体で払ってやる。だから、てめェもその物騒な銃をしまってきっちり受け取れ。それで貸し借り無しだ、いいか?」
「いいだろう。きっちり受け取ってやるから覚悟しとけ」
絡めた足を開かされて今度こそ、がぶりと食らいつかれた。
じゅるるると吸い上げられて、ペニスが否応無しに膨れ上がる。

「死にぞこないのくせに元気じゃねェか」
まるで淫乱だとでもいうように笑われて、頭の中も身体もカッとなった。
「枯れた年寄りじゃねェんだ、当たり前だろが!」
反論するが、その反面、枯れてるくらいのほうが良かったかも、とも思う。
ゾロシアの強烈な舌使いに身体がびくびくと跳ねる。
「う、あっ、んん…」
甘い声なんか上げてたまるかと思うのに、つやっぽい声が漏れてしまう。
(クソッ、コイツうまい…)
そのへんの女のフェラなんて目じゃない。
男同士、どこが感じるかわかっているというだけではなさそうだ。
やたらと熱心に、ザラリとした熱い舌がサンジの肉棒に絡みつき、亀頭へ向かって蛇行するようにぬらぬらと這う。
カリのくびれも反り返った傘の縁も丹念に舐め回され、染み出したカウパー液を全て吸い上げる勢いで尿道口がじゅううっと吸われた。
「う、う、ああうぁうっっ!!」
吸い上げられ舐め回され、じゅぼじゅぼべろべろ繰り返されて、精が噴き上がる。

ぐたりと弛緩する間もなく、犬の格好になって腰を突き出すように命じられた。
高く掲げられた尻たぶを両の手でがっしりつかまれ、左右に割られる。
広げられた尻穴に、ゾロシアの口内に放った精液と混ぜ合わされた唾液が、ペッと吐き出された。
それを塗り込めながら、ゾロシアの中指と人さし指が2本揃えてズブリと入ってくる。
2本の指がばらばらに動かされて、サンジの腸壁を擦る。
痛みとも疼きとも快感とも判別つかない、なにかゾワゾワした感覚がじわりと広がってきた。
だが、いつまでも狭いそこに焦れたのか、ゾロシアは充分に解れないうちに逸物を突っ込んできた。
「ぅぐっっ!!」
サンジが背をそらせて、こぼれかけた悲鳴を呑み込んだ。
痛みをこらえて、金色の頭がフルフルと振るえた。
だが四つんばいの身体は無意識に前へ逃れようとする。
その腰を両手でがっしりと掴んで初めて、ゾロシアは、あまりの細さに驚愕した。

細いというより、それは「薄い」に近かった。
この胴の中に自分と同じように内臓が入っているとは思えないほどの薄さ。
熱にうなされる身体をガウンの上から抱きしめた時には、ここまで細いとは思わなかった。
改めて見ると、脊椎の節がひとつひとつ確かめられるほどだし、肩甲骨は出来損ないの羽のようにくっきりと浮いている。
背中を撫でると、手のひらに伝わってくるのは骨と皮膚と、しなやかな背筋の感触。
筋肉の存在は感じられても、肉の重みやごつさがまるで無い。
自分の筋肉が重くてどっしりとした鋼の筋肉なら、サンジのそれは、薄くてしなやかなチタンだ。

欲棒を突っ込んだままで、背後からサンジの身体を抱き起こして身体の前面を確かめる。
腹筋は固く、しっかり割れている。
だが、もともと細かったうえにこの数日間の高熱で身体の肉が削がれ、何も食べていなかった腹はぺしゃんこだ。

「う…あ…」
サンジが呻いた。
身体を起こされたせいで座位の体勢になった。
そのため自重がかかって、逸物が楔のように深く穿ってきた。
ゾロシアは苦しげに息を吐くサンジの薄い腹をゆっくりなでた。
汗ばんだ肌が、ゾロシアの手にしっとりと吸い付いてくる。
その手を上に伸ばして胸の突起に触れる。
とたんに薄い身体がビクンとしなった。
もがくように身体を動かすが、かえって、ゾロシアの太い杭に串刺しにされた内壁が擦られる。
サンジのペニスが、くん、と首をもたげた。
それに気をよくしたゾロシアは乳首もこりこりと弄り、鎖骨を指先でなぞる。
その指はのどを遡って、ふわふわしたあごひげを弄ぶ。
反対の手はぐるりと回して細い肩を抱いた。

そうやってサンジの身体を腕の中に包んだら、数十時間前、性的なことは何も仕掛けずにただこの身体を抱きしめた感触を思い出した。
そして、ゆっくり死の淵へ近づいていくサンジに、自分らしくなく狼狽したことも…。
死なせずにすんだのだ、という思いがせり上がって、気持ちがじわりと温かいものに満たされた。



一方サンジは、急に態度の変わったゾロシアに混乱していた。
(愛撫って普通は上から下に行くもんだろう? それに愛撫してから突っ込むもんだろうが? それが、フェラして突っ込んで、そのあと股から上に向かって愛撫だと?)
恋と愛のハンターなはずの自分の恋愛辞典には、こんなやり方は載っていない。
混乱するサンジの唇に、うにゃ、と柔かいものが当たった。
続いて、にゅる、と温かいものが口内に入ってくる。
舌を絡め取られながら、髪を梳かれながら、サンジは思い出す。
(そうだった、手順もやることもめちゃくちゃだが、コイツは俺に害意は無い。害意どころか一昨日この腕から流れ込んできたものは……)

自分の気持ちと相手の気持ちによくよく向き合ってみれば、湧き上がってくるものは身体の欲望だけではない。
その熱い奔流に身を任せて、ふたりはいつしか互いに激しく相手を求め合っていた。


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