エゴイスト #2


ローションの冷たい感触に、サンジの身体がびくんと跳ねる。
双丘の谷間に垂れるほどそれが流された。
引き裂いて、後孔を怪我させたいわけではないのだ。いくら気持ちが荒れ狂っていても、その勢いを無理な挿入にすりかえて気持ちを晴らすような無体をするほど、ゾロも幼稚ではなくなっている。傷つけずとも苦しめる方法も知っている。

襞のひとつひとつを伸ばすようにローションを塗りこめられて、ぬるりとした感触と共にゾロの指が入口を押し広げて奥へと入ってきた。
浅いところを抉るように指がぐるりと回る。
「う…ううぅっ…」
仰け反るように身体をしならせてサンジが喘いだ。
日の落ちないうちから、狭い肉筒をくちくちと念入りに押し広げていく指がおぞましい。いつもなら身体を繋げるための愛情の証の行為が、冷たい怒りに満ちて行われると、こんなにも恐ろしい。

徐々に指が増やされた。骨格のしっかりした指が何度も出たり入ったりして、狭い器官を押し広げていく。
だが、決して感じる部分を刺激してこない。
ただひたすらに解され拡張させられていく行為に、不安と緊張がサンジの心に溜まっていく。
その心の震えを表わすかのように冷たい汗にじわりと噴き出してくる。

「ひっ…!」
突然ひたりと入口の襞に押し当てられた冷たい物質の感触に、サンジの身体がびくんと跳ねた。
「てめ…まさか…」
恐ろしい予感に振り向き、視界に入ったソレにサンジの目が見開かれる。
「なんだ? 初めてみるわけでもねェだろ? せっかくだから、よく見せてやろうか」
目の間に突き出されたのは、醜悪きわまりないバイブ。
細身だが、ゴツゴツとした突起が側面にびっしりとついており、首を傾げたような先端にも突起がついている。

思わず目を反らすと、よく見ろ、と、顔の向きを無理矢理戻される。
クソッと思わず悪態をつくと、ゾロはにやりと笑ってスイッチを入れた。
目の前でソレは、くねくね動いたり、回転したり、きつつきが頭を振るように先端だけ激しく動いたりする。
「最近のバイブはよく出来てんなぁ、ん?」
わざと感心したように言うゾロの言葉も聞こえないくらい、サンジの表情は悲壮になっていく。
これを突っ込むために念入りに解されたのか…
サンジは絶望したように、きゅ、と目を閉じた。

「ぃ…いやだッ!…あ、あぁ…ううっ…」
抗うサンジの後ろに、醜悪な淫具が容赦なく埋め込まれていく。
「やめッ…あッ…」
ローションを塗りたくられ、ぬらぬらと光るソレが、柔かく解された肉襞の奥へゆっくりと潜っていく。
ごつごつした突起が腸壁を擦り上げる。
「うぇっ…」
圧迫感と嫌悪感で、えずきあげそうだ。
なのに、ゾロが淫具を揺さぶると、快感が反射的に無理矢理引き起こされる。それが苦しい。
「あ、あ、あっ…」
ずぼずぼと抜き差しされて、身体が弓なりに仰け反る。
「ずいぶん悦さそうじゃねェか。俺のよりこっちのほうがいいか?」
酷い言葉で責められて、サンジが鋭くゾロを睨む。
だが抜き差しで与えられる刺激など、序の口だったのだ。

何度か抜き差しした後、、ゾロは淫具を根元までぎっちりとサンジの後孔に埋め込んだ。
そしてカチリとスイッチを入れた。
「うああぁあっ!」
虫の羽音のような機械音がした途端、サンジが悲鳴をあげた。

「てめっ! うぁあああっ……」
ガクガクと身体を揺らして、逃れようとする。
だが、縛られた身体では、自分の身体の中に埋め込まれた淫具から逃れる術はない。
「…ああああっ…」
まるで身体の中に、ビチビチと跳ねる小魚をたくさん入れられたようだ。
身を捩っても、暴れても、複雑に蠢く異物が身体を侵食してくる。
その刺激にぎゅうっと肉壁を締め付けてしまえば、淫具の突起と動きがいっそうサンジのたぎる内部を抉ってくる。
「くっ……いやだッ…」
白い尻を突き出しくねらせ、身悶える。
が、悶えても、嫌だと身体を震わせても、内部はどろりと熱く潤んでくる。
反るように立ち上がり張り詰めた前茎に、ぎりぎりと紐が食い込んだ。
紐に伸縮性が有るため、千切れるような痛みではないが、それでも敏感なところを締め付けられる痛みはじんじんと身体を蝕む。
その痛みに加えて、ぐつぐつと煮えたぎる快感を解放できない苦しさで、サンジは喘いだ。
「抜けッッ…抜いてくれッ…」
目元を潤ませて思わず頼むと、ゾロが淫具に手を伸ばしてきた。
だが抜いてくれるのだ、と安堵の息を漏らしたのは間違いだった。

「ひっ…ぃあああっ……アアアアッッ!!」
戒められた身体が跳ねるように大きく仰け反った。
抜くどころか、ゾロは淫具をサンジのもっとも過敏なスポットに押し当ててきたのだ。
「ひっ…ううっ…」
「女といたのは、おまえだろ?」
「知らねっ…」
「意地を張るのもいい加減にしろ。ここだって辛いだろ。先走りでぐちょぐちょだ」
「あうっ…」
たらたらと透明な液をこぼす砲身をぬちゃりと扱かれて腰がぶるっと震える。
「うっ…あっ…は、離せ…」
「全部、俺に言うか?」
だがサンジはかたくなだった。

「ったく、さっさと言っちまったほうが楽だろうが!」
焦れたゾロはトプトプと蜜が溢れ出る鈴口を、指で引っ掻き始めた。
「ッ!…ゾロッ!…」
痺れるような甘い快感が身体を駆け巡る。
だが開放する先を堰き止められ戒められた肉茎には、拷問に等しい。
白い身体はびくびくと跳ね、精液が出せない代わりに先走りの汁がどくどくと流れ、股間に滴っていく。
サンジは気が狂ったように身をよじって悶えた。
だが悶えれば悶えるほど、後ろに埋め込まれた淫具はサンジを責め、その刺激から逃れようと腰を揺らめかせば、濡れそぼる砲身をゾロの手に擦り付けるような具合になる。
「ううっ…あっ…あああっ…あああっ………」
部屋には艶かしい苦悶の声が満ち、サンジは終わらない快感の連鎖にのたうち回った。

「もう観念しろ…」
見ているほうが耐えられなくなって、ついにゾロが言った。
「おめェが言わねぇのなら、あの女に聞いてやろうか?」
その言葉にサンジがハッと目を見開いた。
「やめろ! 彼女に手を出すな!」
反射的に返答して、サンジが、しまった、というように蒼ざめた。

サンジの返答は、今まで否定してきたことを、事実だと認めたことにほかならない。
抑えていたゾロの心が爆発する。
「なんで抱いたッ!? 俺に飽きたか? やっぱり女がいいとか、今頃ほざく気か!?」

相手がその手のプロの女だったら、こんなに気にはならなかった筈だ。
サンジは、たまたま自分とは相愛関係になっているが、基本的に男に欲情するタイプではない。だからサンジの雄の本能が女体を求める時があるのも知っている。
深い関係になったばかりの時は、サンジが女に欲情することすらも許せなかったが、今はだいぶ寛容になり、プロの女性と手合わせすることくらいは、片目をつぶって見逃している。
だが今回の相手は素人だ。
サンジが遊びで素人を抱くとは思えない。
だからこそゾロは不安なのだ。素人女を抱いた真意を確かめたくなる。

あの女に惚れたか?
受ける器官を持たない身体とわかっていながら、つい負担をかけるほど抱いてしまう俺の相手に、ほとほと嫌気が差したのか?
ゆきずりの素人の女を欲情だけで抱くなんて、おまえは出来っこないだろう?
いや、ゆきずりなんかじゃなくて、以前の知り合いだったとか?

質問は次々に沸き起こり、悪いほうへと想像は膨らむ。
はっきり言えよ、いつもベラベラしゃべる口を、今日に限って何をそんなに閉じている?

しかし、サンジは、決して答えようとしなかった。
女性と一緒にいたことは、うっかり認めてしまったが、これ以上はひと言も言わない、という表情で口を引き結んでいる。
その頑固な態度も、先程の「彼女に手を出すな」という言葉も、サンジがどれだけ彼女を大事にしているかを、表わしているように思えた。
そう思ったとたん、ゾロの心に、どす黒く、酷く残忍な気持ちが沸き起こった。

ゾロは淫具を銜えさせられてガクガクと揺れているサンジの身体を、仰向けにひっくり返し、乱暴に膝裏をすくい上げた。
その膝に筒状の拘束具バンドを引っ掛ける。
そして、バンドから伸びるロープの端をベッドヘッドに括りつけた。
「何しやがるッ!? …きさまッッ!」
脚をM字に開いた格好で拘束されたサンジの顔が屈辱に歪んだ。
その顔がすぐさま恐怖に変わる。
ゾロが新しい道具を手にしていた。
それは、俗に『電マ』と呼ばれる性具で、ハンディタイプの電動マッサージ機に性器責め用のイボイボの先端が装着されているものだ。乾電池で動くバイブやローターの数倍の威力を持っている。

その電マを、ゾロは容赦なくサンジの性器に押し付けた。
「ひぃあああッッ!!…ああああッ!…ゾロッ!…や…やめッ!…うッ!……んんあッ…!!」
ブルブルと震える淫具を銜えこんで拡がった後孔も、達したくてトロトロ蜜を零す緊縛された前茎もそのままだ。そのうえ、M字に拘束されて、止まらぬ快感にのたうつ自由も奪われている。
そこへ更に強烈な振動を与えられては、ひとたまりも無い。

あっという間に快感の波を押し上げられて、行き場の無い灼熱が身体の中で荒れ狂う。
終わらない快感は、拷問に近い。
「ああ…ああっ!…んぁああっ……!」
届く筈が無いとわかっていても後ろ手に縛られた手が、前の戒めを解きたくて虚しく動いてしまう。
ボロボロと涙が零れた。
赤ん坊がおむつを替えるような格好で股間を曝け出して、戒める紐までじっとりと濡らしたべたべたのペニスも、二つの房も、淫具を食い締める尻穴も、全てを見られている。
その羞恥と屈辱と拷問のような快感に、サンジがのけぞって身悶える。
「ゾ…ロッ!! …も……狂うッ!!…くっ…ちまうっ…あ、あ、ああああっ!!」

「狂えよ」
ゾロは冷たく言い放った。
ペニスに押し付けられていた電マが離れ、絶え絶えだった息をついたのも一瞬、会淫に再び押し付けられ、その強烈な刺激にサンジは絶叫した。
「ひぅッ!…あぁッ…あッ、あッ、あッ、アーーーーーーーーッッッ!!!!」
後穴のバイブに前立腺を、電マに会淫を同時に責め立てられ、股間から脳天までビリビリと電気に打たれたような強い刺激が駆け巡る。
射精できないまま絶頂に無理矢理達せられて、白い身体が、陸に揚げられた魚の様にビクビクビクッと激しく痙攣(けいれん)する。
その瞬間、サンジの意識は、真っ白に吹き飛んだ。



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