淫獄のプリンス   #2 拡張



クロコダイル様は妥協を許さぬ性格の方でいらっしゃいました。それは、この、捕えた者を監禁する部屋にもきっちりと現れておりました。なにしろMr.プリンスの四肢を拘束している鎖は監禁した部屋と一体になっていたのです。どういうことかと申しますと     .

鎖の先端には丸い球がついております。その球の中に鎖がしまいこまれるにつれ、鎖の長さが短くなっていきます。引き出されれば鎖の長さは長くなります。そしてその球は、天井や壁や床に張り巡らされたレールのようなところを滑っていくことができます。この球の位置と鎖の長さで、拘束した身体をどんな格好にもできるのです。そしてそんな高度な技術を駆使していながらも、その操作は扱いやすいように工夫されております。ボタンとレバーの組み合わせで、初心者の私でも、まるでテレビゲーム機を操作するようにたやすく、Mr.プリンスの身体を拘束したまま、手術台のような大きなテーブルに仰向けに寝かせることができました。

そんなわけで今、Mr.プリンスは、冷たい金属のテーブルにシーツを1枚敷いただけの台の上で、仰向けに横たえられています。羽を開いて虫ピンで止められた蝶のように四肢を開いて一糸纏わぬ姿を曝しているのです。

ご自分がこの部屋にお着きになる前に、この格好にさせておけと命じたのは勿論クロコダイル様です。そのクロコダイル様がようやくお越しになりました。クロコダイル様は、横たえられたMr.プリンスの格好が大変気に入ったようです。テーブルの側に立って、覆いかぶさるようにMr.プリンスの渋面に顔を近づけ、鈎のついていないほうの手でMr.プリンスの身体をさわさわと撫でました。

とたんにMr.プリンスの身体がビクンと小さく跳ね、Mr.プリンスの身体に、嫌悪による鳥肌が浮かびました。ザザっと鳥肌を立てる音が聞こえるような劇的な反応でした。

「触んな、クソ野郎ッ!」

身体を撫で回される嫌悪感にMr.プリンスが叫びます。こんな格好をさせられて、いたぶられずに済むわけが無いことくらいMr.プリンスも解っているのでしょうが、それでも言わずにはいられないようです。捕らえられてなお、怯えることなく凄んでくるMr.プリンスをクロコダイル様は楽しげに見つめます。

「白い肌に鞭の痕というのは美しいものだな」

Mr.プリンスの身体に痛々しく残るミミズ腫れをクロコダイル様は、つつつ、となぞります。鞭で皮膚を裂かれ、赤くもり上がった肉を擦られてピリピリと痛むのでしょう。Mr.プリンスがくぅっと痛みをこらえるような表情を致しました。

「この白い肌に鞭の痕を刻んでやるのは悪くない。痛みに耐えるお前も悪くない。だが、お前は、もっと好い表情を持っているだろう?」

クロコダイル様はそうおっしゃると、鞭の痕を辿っていた手を、ゆっくりとMr.プリンスの恥部へと下ろしていきます。そしてMr.プリンスの濃い金色の茂みに太い指を差し入れて逆毛を立てるように梳きました。その刺激に、Mr.プリンスが、くっと身体を強張らせます。大きく割られた股間をなめるように凝視したあと、クロコダイル様はMr.プリンスの拘束された脚の付け根に指を滑らせ、柔かく滑らかな感触を楽しむようにゆるゆると往復させます。その動きは肉棒や淫嚢をわずかに掠め、あまりにもどかしい刺激がMr.プリンスに与えられるのです。痛みや強い刺激だけが責め苦になるわけでないことを私はまざまざと知りました。

しばらくしてクロコダイル様は私に潤滑剤を持ってくるように命じました。そして潤滑剤の甘い香りが漂い、

「…ッ!」

とろりとしたジェルの助けを借りながら、クロコダイル様はMr.プリンスの後門にずぶりと指を埋め込みました。そしてその指をぐりぐりと回します。

「やっ…あっ…うあっ!」

四肢を拘束している鎖を引きちぎらんとするように、Mr.プリンスの身体が仰け反ります。

「やはり狭すぎるな。このツラと身体で男も垂らし込んでいるかと思ったが、どうも処女らしい。だが、むしろ…」

クロコダイル様は埋め込んだ指を引き抜きながら、非常に楽しそうにお笑いになりました。そして、ポケットから、なにやら細長いものを取り出し、こうおっしゃったのです。

「狭いほうが拡張し甲斐があるというものだ」と。

「拡張」という言葉に、びくっと表情を固くしたMr.プリンスの目の前に、取り出した細長いものがかざされました。

「処女でも、これがどこに使うものかくらい、わかるだろう、Mr.プリンス? しかも、これは、特別うまく出来たディルドで、無理に穴に深く埋め込まなくても、おまえ自身がコレを呑み込んでいくのだ」

クロコダイル様が「ディルド」だとおっしゃるソレは、男根の形をしたよくあるディルドとはまったく違っていました。長さは20cm程で、先端は、きのこ型の三角錐がついています。その下には先端の三角錐よりやや大きめの三角錐。その下にはさらに大き目の三角錐。つまり段階的に大きくなる三角錐が連なっているのです。直径が6cm近くはある最後の三角錐の底面からは、細い棒が突き出ており、細い棒の途中には、刀の柄のようなストッパーがついています。細長い棒の端には、埋まったディルドを取り出す時に引っ張る革紐が垂れていました。

クロコダイル様は、横から見るとモミの木のような形状のそのディルドに潤滑剤をたっぷりと塗りつけました。そしてその先端のきのこ型を、Mr.プリンスの固く閉じた肉蕾にずずっと埋め込みました。先端の三角錐と次の三角錐をつなぐ部分がくびれているため、一度腸内に入ってしまうと、三角錐の底面の張り出しが引っ掛かって、手で引き抜く以外は取り出せません。もちろん万歳をするように手を縫いとめられているMr.プリンスには手で引き抜くことなど出来ません。それどころか、腹筋と後門付近の筋肉を使って埋め込まれた異物を押し出そうと入口の襞をひくつかせたとたん、逆に次の三角錐がつるんとMr.プリンスの中に呑み込まれてしまったのです。

「んああっ…」

予想もしなかった成り行きと刺激に、Mr.プリンスから思わず無防備な喘ぎ声が漏れました。

「う…あ…」

ディルドをひねり出そうとすると逆に飲み込んでしまうとわかって、Mr.プリンスは細く息を吐きながら後孔から慎重に力を抜こうとしています。でも、異物を銜え込んでいるそこは、どうしても、その異物感に耐えられずにそれを締め付けてしまいます。そのたびに、三角錐がひとつずつMr.プリンスの中に滑り込んでいくのです。クロコダイル様が、無理せずともおまえ自身で呑み込んでいく、とおっしゃった言葉通りのことが、私の目の前で繰り広げられておりました。

「…ふぁっ…あんっ…」

三角錐がひとつ、またひとつと入っていくたびに腸内がこすり上げられ、Mr.プリンスがブルッと震えます。威勢良く悪態をついていた口からは、かみ殺すような甘い嗚咽が漏れ始め、異物感とともにじんわりと広がってくる刺激に、腰が揺らめきます。目元は涙でしっとりと濡れていました。

突然、Mr.プリンスが高い悲鳴を上げました。何個目かの三角錐を呑み込んだとたん、ディルドの先端が前立腺の壁をこすり上げたようです。

「うあっ、はっ…やぁっっ…あ、あ、ああっ…!…!」

強い刺激にきゅうっと腸内が収縮し、その収縮でまたディルドが深く入り込み前立腺を擦る…その繰り返しがMr.プリンスを襲います。Mr.プリンスの前茎は私たちの目の前で瞬く間に立ち上がりました。それでも後ろだけでイけるようには開発されていない身体は、熱を解放できずにいるのでしょう。いまや一番大きい三角錐まで銜え込んで、肉襞をいっぱいにまで広げたMr.プリンスはびくびくと震え、うわごとのように「い…い…」と繰り返し何かを言いかけては、必死で言葉をかみ殺しています。

「イきたいと言いたいんだろう? 我慢することはない。イかせてくださいと頼んでみろ」

クロコダイル様がそうおっしゃると、Mr.プリンスは潤んだ瞳でキッと睨んで「誰が…てめ…なんかにっ…!」と吼えました。

「だったらおまえの希望通り、放置してやろう」

クロコダイル様はにやりと笑い、悶えるMr.プリンスを残して無情に部屋を去ったのです。去り際に、朝昼晩の1日3回3日間、このディルドをMr.プリンスに埋め込むように、ディルドのすべてがMr.プリンスの体内に納まってから2時間は放置するように、と、私に命じながら。







私はクロコダイル様の忠実な僕(しもべ)です。命令どおり、今日もMr.プリンスをテーブルに横たえ、四肢を開いて小さな蕾に、あの特殊なディルドの先端を埋め込みます。するとしばらくしてディルドは、私の目の前で、少しずつMr.プリンスの奥と進んでいくのです。そしてMr.プリンスの中心が反応し始め      .

横たえられた身体の中央でそそり立つ肉茎は、ぬらぬらと粘液をこぼしています。そして白い尻にズブズブと沈んでいくのは毒々しい色のディルドの楔(くさび)。びくびくと身悶える身体。もはや抑えることができなくなった喘ぎ声。「卑猥」という言葉に相応しい光景を私は三日三晩見続けたのでした。




(#2拡張/了)





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