修羅の贄 #14



捕らえられたサンジは縄を掛けられ、四方を覆われた駕籠(かご)に押し込められてどこかへ運ばれた。
狭い駕籠の中で揺られていると、霜月城に運ばれたときのことを思い出す。
あの時は、誰に捕らえられたのかわからず、このままでは玻璃を救えなくなると思って、ただ焦っていた。
今の気持ちは、もっと投げやりだ。チャルロスにまんまとしてやられた。
しかし茶会の亭主を務めるだけで終わるはずがないと予想はしていた。
ろくなことにならないとわかっていて、この話を受けたのだ。
それが思ったよりも早かったというだけだ…。
サンジは自分にそう言い聞かせた。

半刻(一時間)もしないうちにサンジは、駕籠から出された。
罪人として土牢のようなところに閉じ込められるのだろうと思っていたが、畳敷きの立派な座敷だ。
なんのことはない。元の館のひと部屋のようだ。
そこにサンジは縄を掛けられたまま転がされた。
見張り役と思われた男たちは去り、代わりに女官たちが部屋に入ってくる。
彼女たちには見覚えがある。サンジの身体を磨き、この重たい衣装をつけた女官たちだ。

「どうかおとなしくしていてくださいませ」
女官頭と思える女の声が上から降ってきた。
「あなた様がここから居なくなるようなことがあれば、すべては世話役を仰せつかった我々の落ち度とされ、首を刎ねられます」

そう来たか…。自分が逃げれば、この女人たちが殺される…。
自分の逃亡を断念させるに、これほど効果的な策はあるだろうか。
サンジの脳裏に、口の端をわずかに吊り上げて笑う『鳩』が浮かんだ。

それから数時間、女官たちはサンジをぐるりと取り囲み、甲斐甲斐しく世話をやいた。
縛られたままのサンジに飲み物を与え、汗を拭き、香をくゆらせる。
10人もの女官たちに囲まれて、これで縛られていなければ極楽だろうに…。



夜が更けて、サンジは再び駕籠(かご)に押し込められた。
今度こそ土牢送りだろうか。罪人を運ぶにしては駕籠が立派なのが気にかかる。
駕籠は館の外へ出て、戸外を移動していく。
やがて駕籠がすっと止まった。
戸が開けられ、サンジの顔を確かめた人物に、サンジははっとした。
『鳩』だ。
やはりすべてを仕組んだのはこいつか…。
霜月で受けた屈辱もよみがえってサンジは『鳩』をきっと睨んだ。

『鳩』のほうは気にも留めずに背後に向かって「牛…」と声を掛けた。
と、のっそりと大男が現れて、サンジを輿から引き出すや、下からすくいあげた。
身体がふわりと浮く。
「なにをっ…!」
サンジは抵抗しようとした。
だが、『牛』と呼ばれた大男は、軽々とサンジを抱え上げ、鳩に続いて生け垣の奥に入っていく。

中は、池泉庭園になっており、結構な広さがあった。
ところどころに火が灯され、池はその水面に火の揺らぎを映し出している。
紅葉し始めた木々も、宵闇と月明かりと火の照り返しを背景に幻想的に浮かびあがっている。
景色だけ見れば大層美しい風景だった。

その美しさに一瞬心を奪われたサンジだが、すぐにその場の異様な空気に気づいた。妙な熱気があるのだ。
旧暦9月の夜ともなれば、戸外はもう寒い。
だがこの場は、なにかこもったようなまとわりつくような空気がある。
これは人の熱気だ。けれど解放された熱気でなく、清々しさとは真逆の陰鬱さを感じる。
ところどころに張られた幔幕の中からは、人が集まっている気配やくぐもった声がする。

やがて『牛』は趣味の悪い極彩色の幔幕に入った。
待ちかねたような、どよめきに迎えられる。
人が集まっているのはわかるが、かがり火を背にして立っているため、サンジからは逆光で彼らの顔まではわからない。
だが服装から、殿上人だということはわかった。
コの字型に集っている彼らの足元の芝には、二畳ほどの紅い毛氈が広げられている。

『牛』はその毛氈の上に、サンジを無造作に下ろした。
上から取り囲まれるように視線が降ってくる。
そのどれもが、ねっとりと絡みつくような俗臭を含んでいてサンジは思わず身震いした。

居心地の悪さに、サンジは横倒しの身体を翻して身体を起こそうとした。
だが、縄を掛けられ、幾重にも重ねた着物を着せられたままの身体は、サンジの腹筋力をもってしても思うままにならない。

起きようとしてはぱたんと倒れるサンジを彼らは嘲笑った。
だが腹が立つと闘志が増すのがサンジだ。
今度こそ、と身体のばねを最大限に使おうとした。

が、身体を跳ねさせたとたん、『牛』がすばやく覆いかぶさってきた。
大きな図体に封じられ、あ、という間もなく、目隠しをされた。
「くそっ!!」
暴れると、放り出すように身体を離される。
どさっと毛氈の上に落ちた。

目隠しを外そうと頭を振り乱したが、無駄だった。
視界が利かない焦りがサンジを過敏にする。
「これをはずせっ!」
冷静さを失って声を限りに叫べば、また嘲笑がさざなみのように起こった。
それがまた、サンジの神経を逆なでる。

目隠しか、手の縄か、どちらかを外そうともがくサンジを殿上人ははやし立てた。
「これはチャルロス卿の『素晴らしき』茶会の亭主殿のように見えますが?」
「まさか、ここで茶を点ててくれるのかえ?」
「あの渡来の茶器で?」

サンジの頭上でくだらない会話が交わされる。
茶会をするならこんな縛ったまま連れてくるわけはない。
分かりきったことをもったい付けて語るのは、まんまと茶会の罠に落ちたサンジを嘲笑うためだ。

「もちろん茶会などせぬえ。茶会ではがっかりさせられたゆえな。だが我は慈悲深くも、こやつに挽回の機会を与えてやろうというのだえ」
チャルロスが愉快そうに言った。
その言葉を説明するように『鳩』が続ける。

「昼間は、茶会を心待ちにしてくださった皆様に、誠に失礼を致しました。代わりと言ってはなんですが、この席で皆様には楽しんでいただきたいと思います」

「なるほど、それは良い考え。しかし、今宵の宴は女人禁制ではなかったかね?」
殿上人のひとりが問う。
その言葉は本気でとがめているのではなく、この余興を大いに楽しもうという含み笑いが込められている。
『鳩』が答えた。
「おっしゃるとおり、今宵は女人禁制です。ですが、このものは女人ではありません」

「そうかえ? チャルロス殿の茶会の亭主は、女人と聞いてきたがのぉ?」
これもまた、これから始まる狂宴を察した者の言葉だ。
『鳩』は半ばあきれながら笑った。
殿上人とは普段は愚鈍なくせに、こういう下劣な楽しみにはなんと勘が働くものだろう。

「女人で無い証拠をご覧にいれましょう」
言うや否や、『鳩』と『牛』はサンジを二人がかりで押さえ込む。
後ろ手に回されていた両腕は開かれて、磔(はりつけ)のように毛氈の両端にある杭に括られた。
サンジの両足をひとまとめに括っていた縄もぶつりと切られた。
その瞬間を逃さず、サンジは二人を蹴りつけようとした。
が、目隠しをされていては目標がわからない。
蹴りを出した足は『牛』の頬を掠めはしたが、逆にがっしりと掴まれた。

『牛』がサンジの足を左右に割り開く。
「やめろっっ…!!」
拒絶の言葉が届くはずもない。
開かされた足首のそれぞれに再び縄が掛けられ、頭上に張り出している楓の木に瞬く間に括られてしまった。
重たい着物がずるりと垂れ下がり、白い脚が露出する。
その脚の白さだけでも殿上人は魅入られたが、脚の付け根に垂れ落ちた着物が鳩によってめくられ、双丘があらわにされると、その白さにまた、皆が息をのんだ。

『鳩』はサンジの腰の下に、綿の入った円座を押し込んだ。そのせいでいっそう尻が浮く。
女のふくよかさの無い、引き締まった双丘に『鳩』が手をかけた。
肌の滑らかさを確かめるようにゆっくりと撫でられて、サンジの身体がびくっと跳ねた。
サンジを見張っていた女官たちは、飲み物は与えてくれたが食べ物はくれなかった。
そのわけを今更理解した。

サンジは嫌悪感と屈辱感に身をよじった。
だが、四肢をそれぞれに縛られた身体では、尻を揺らしたようにしか見えない。
『鳩』は無駄な抵抗に揺らめく尻を両手でこねるようにもみしだく。
見守る殿上人らが焦れ始めたころ、サンジの双丘が左右にぐいと割り開かれた。
奥には紅梅の蕾のような窄まりがひっそりと息づいている。
その敏感な肉蕾に『鳩』の親指の先が近づき、ぐっとこじあけられた。
サンジの腰が再び弾かれたように揺れる。

「固いな…」
秘部の締まりが思った以上であることに気づいた『鳩』は、指先をとろみのある香油に浸して、今度は人差し指で触れてきた。
媚肉の襞を一枚一枚めくるように入り口をほぐし、柔らかく開いた蕾にゆっくりと指が進入してくる。
「うう…」
吊られた足が突っ張った。
眉根が寄せられ、この屈辱に耐えようと、形のよい唇がかみ締められて、色を失っていく。

下腹部に力を入れて進入を拒もうとするサンジと、指を埋め込もうとする『鳩』の攻防は、『鳩』の指を抜き差しさせることになって、かえってサンジを苦しめた。
やがて『鳩』の指が根元まで埋まる。
「ひあっ…!」
中でぐいっと曲げられて、思わず悲鳴のような声が出た。

内部をぐるりとなぞった指がいったん引き抜かれた。
息つく間もなく、今度は中指を添えて二本で侵入してくる。
それが根元まで埋まると、締め付けてくる肉壁をこじあけるように指が開いていく。

「う…うう…」
苦しさとおぞましさで上にずりあがろうとするサンジだが、『鳩』に腰をつかまれた。
狭い肉筒を『鳩』の指がぐいぐいと責め立てる。

「あ、あっ…!」
突然サンジの身体がびくんと跳ねた。もっとも敏感なところを探り当てられたのだ。
追い詰めるように『鳩』の手が強弱をつけて蠢(うごめ)き始めた。

「いやっ…う…あぁ…」
かみ締めた唇がほどけ、抵抗を見せていた身体が刺激に反応する。
「あ、あああっ…」
身体がぞくりと粟立って、高められた熱が白い身体を桜色に染めていく。

しかし、サンジは達することが出来なかった。
後ろの刺激だけで達したことなどない。
それだけでなく、ロロノアの元で「女」として生かされ達することを禁じられてきた日々が、サンジに吐精を堪(こら)える癖をつけていた。

こもった熱ばかりがサンジの中をかけめぐる。
苦しい…。

サンジの指先が何かを求めるように宙を引っかく。
前にも刺激が欲しい。
サンジの腰は揺らめいて、知らずに腰を突き出して求めている。

どうやら後ろだけで達するように仕込まれてはいないと『鳩』も気づいた。
『鳩』は重たい着物のあわせを割り、手を潜り込ませてサンジの男の証を取り出した。
それはすでに先端からとろとろと蜜をこぼして濡れそぼっている。
手の中に握りこんでそろりとしごけば、それだけでサンジの身体が悦楽に震えた。

『鳩』は片方の手で若茎を弄び、もう片方の手で肉筒の奥を責め立てた。
穴が使えるだけでは女と同じと見なされてしまう。
陰茎があるだけでもだめだ。異型の陰核を持った女もいると難癖がつくだろう。
つまり男汁を吹き上げて初めて、殿上人らは「橘」を「男」と認めるのだ。
そのことを、『鳩』はわかっていた。

『鳩』の手戯が執拗な動きを増した。
「う…あああっ…」
サンジが激しく息を乱して悶え始めた。
「離せっ…」
あえぐ息の合間に抵抗の言葉を吐くが、細い腰は『鳩』の手にこすりつけるように揺らめいてしまう。
前後に同時に強い刺激が送り込まれた。
「あ、あ、あああっ…」
サンジが、縄を揺らすように激しく胴震いした。
直後、きらびやかな着物の間から、白濁した液が噴き上がった。



長い放出のあと、サンジの身体がくたりと崩れていく。

「どうです? 女人ではこのような濁液は吐き出しますまい」
『鳩』はサンジの放った蜜液で汚れた指を開いて、殿上人にかざして見せる。
かがり火の灯りに、粘りのある白液が光りながら『鳩』の手を伝い落ちていく。

なるほどと殿上人らが笑い立てた。
『鳩』の言葉と周りの嘲笑に、放出の余韻にあえいでいた紅い唇は一気に色を失った。
サンジの心に敗北感と大きな屈辱感とが押し寄せてくる。
この痴態の一部始終を、殿上人の集団に見物されていたのだ。
青ざめた唇をぐっと噛んで恥辱に震えたサンジに気づいていながら『鳩』は歌うように続ける。

「しかし、まだお疑いがあるようでしたら、各御仁がご自分の手で、吐かせてみてはどうでしょうか?」

その言葉に殿上人らは色めきたった。
「おぉ、そうだな。自分で確かめねば、納得できぬな」
彼らは嬉々として懐から、いかがわしい淫具を取り出した。
サンジが目隠しをされていたのは幸せだったかもしれない。
それほどまでに彼らは手に手に醜悪なものを握っていた。

彼らにとってサンジは、まず出生からして自分たちより下等の生き物だ。
さらに子孫繁栄にも繋がらない男だ。
戦(いくさ)の敗者でありながら死に損ない、山奥の武将に飼われていたとも聞いている。
そんな者と交われば、自分の運が下がると彼らは思っている。
差別意識が強いものは、犬畜生と交わるのに等しいとまで思っている。
ゆえに彼らは自分の大事な部分をじかに肌合わせようとはしない。
しかし、嬲ることで楽しむ。温もりを交わさぬ分、かえって残忍なほどに。

自分たちより劣ると見なした人間には、情けも礼儀も露ほどに持ち合わせていない彼らだが、殿上人同士には年功序列の礼儀があるらしい。チャルロスは自分が嬲る前に、年嵩(としかさ)の殿上人に先鞭を譲った。

年嵩の男は勧められるままに、吊られた白い脚の間に入った。
サンジの胴に巻かれた細帯を解き、乱れた着物の裾をさらに開く。
「では、検分いたそうか」
言うなり、サンジの尻を持ち上げた。
サンジははっとして双丘に力を入れたが、それより早く男の手がサンジの臀部を割り開く。
後蕾が男の眼前に曝される。
たった今まで『鳩』の指を銜えこんでいたとはいえ、そこは再び恥らうように収縮している。
「ほう、良い容(かたち)だ。肉棒になじまされた「菊」にしては、襞が崩れておらず美しい。さぞ大事に仕込まれたのでしょうな」

よく通る声でそう言われてサンジは恥辱に身をよじった。
だがサンジが嫌がれば嫌がるほど、ここに集う殿上人は喜ぶのだ。
男は取り出した張り型を窄まりに押し当てた。
太さは普通だ。だが広がった傘の部分に、釘(くぎ)の頭のような突起がいくつも付いている。
竿の部分には波打つような大きな溝が螺旋状に入っている。

「っあ……あああっ…」
ずぶりと差し込まれ、回すように奥へと埋め込まれて、サンジはあられもない声を上げた。
一度達した身体は敏感になっている。
小豆(あずき)よりひと回り小さい突起がサンジの狭い器官を引っかきながら進んでいく。
強い刺激に反応して肉壁が収縮すれば、溝が掘り込まれた張り型全体を締め付け、新たな刺激を生む。

周りの熱気が増した。
目隠しをされたサンジにも、欲にまみれた男たちが乗り出すようにして自分を取り囲んだことがわかる。
下品な笑い声、浮かされたような荒い息遣い。それに混じって雄の匂い…。
サンジの痴態に煽られて、我慢できずに取り出して扱き始めたに違いない。

おぞましさに反吐が出そうだった。
だが、醜悪な張り型に刺し貫かれ強い刺激に揺さぶられる身体は意思に反して陥落していく。
男は、淫蕩の宴の常連なだけあって、その特殊な張り型をどう進めれば効果的かをよくわかっていた。
緩急をつけ、ぐるりと回し、あるいは一旦抜き取ってまた埋め込み、激しい愉悦を与え続けてサンジの理性を屈服させていく。
身体がびくびくと震えて止まない。
「あ、あ、ああっ…うぁあああっ…」
惑乱したサンジは恥も自尊心も捨てて絶叫していた。



その後、どれだけの張り型がサンジの身体を抉ったことだろう。
チャルロスは鳩が霜月国に持ってきた、あの蛇を象った張り型を用意してきた。
毛羽がついたものを使って内部に痒みを起こさせてサンジが身もだえするのを笑った者もいる。
『鳩』は時折、射精を促すように、サンジの鈴口に爪を立てた。
放出するものがなくなっても、嬲られるために連れてこられた身体は、解放されずに淫らな刺激を与えられ続けた。

周りが見えないサンジには、この狂宴がいつ終わるのかもわからない。
自我を失いそうになる闇の中、頬に何かがはらりと落ちてきた。
楓の葉だ。
こんなことが以前にもあった。
あぁ、そうだ、今の俺は半年前、桜の木に括られた時と同じ格好だ。
あの時、昼間の青空にむかって開かされた脚は、今は月がかかった夜空に向かって開かされている。
あの時、自分の上に散ってきた桜の花びらは、今は楓となって自分に降り注ぐ。
あの時、自分を貫いたものは熱い血潮の通うものだったが、今は冷たいつくりものだ。
そんなものを何度も埋め込まれ、抜き差しされて何度も強制的に吐精させられている。
こんな、衆人環視のもとで!!

『…………ゾ……』

心がついその名を呼ぼうとして、サンジは必死で押し留めた。
これは俺が決めたことだ。本当は『貸し出し』たくないのだと、あいつは言ってくれた。
それを「迷わず行くさ」と言ったのは俺だ。だからおまえも迷うなとほのめかしたのは俺だ。
すがってはならない。助けを求めてはならない。あいつに後悔させてはならない。

けれど涙は溢れ出す。
目隠しの布がぐっしょりと濡れ、吸いきれずに溢れた涙が、頬を伝い落ちた。







サンジの受難はその日で終わりではなかった。
1週間後、大社への奉納を終えた者たちが帰ってきた際、彼らの七日にわたる道中の禁欲を労い、今度は女楽の宴が開かれた。
その宴にもサンジは引き出されたのだ。
目隠しをされ、着物の裾をまくられて獣の形に這わされ、前回同様衆人環視のもと、今度は「女」として漏らせないよう玉茎を固く縛られて、醜悪な張り型を再び飲み込まされた。
吐精出来ない分、解放されない悦楽がサンジの中で荒れ狂う。
ひとつを耐えても、次の張り型がまたサンジを襲う。
最後には、許してくれと口走り、逃れたい一心で、彼らの白濁が貯められた杯を命じられるままに舐めた。
その仕打ちは、女人禁制の狂宴で受けた屈辱からようやく立ち直りかけていたサンジの心を、打ちくだくに十分だった。
『鳩』はよくわかっていた。
2つの傷を同時期につけるよりも、治りかけた傷のかさぶたをはがして再度傷口をこじあけるほうが傷痕が残ることを。



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